内容説明
ミュアの『スコットランド紀行』の姉妹編。『夜の来訪者』で知られるイングランドの劇作家・小説家プリーストリー(一八九四‐一九八四)が、一九三〇年代のイングランド各地の印象と人々の気質の違いを鋭い観察眼で描いた古典的紀行。本邦初訳。
目次
第1章 サウサンプトンへ
第2章 ブリストルとスウィンドンへ
第3章 コッツウォルド地方へ
第4章 コヴェントリー、バーミンガム、そしてブラック・カントリーへ
第5章 レスターとノッティンガムへ
第6章 ウエスト・ライディング地方へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
129
辛口です。ジャーナリストは今も昔も…。批判する事が結局目的なのでは。斜に構えすぎ。敢えてのバスでの旅行の素晴らしさ語る言葉は自分に酔っていないか。車での旅行記が流行った時代にバスを礼賛。しかし、工業都市にいくと労働者の暮らしの酷さや工場が街の外観を損なうことを批判している。ラジオでの語りで大変に人気だったようだが、言葉にすると虚しさがあらわとなっている。オーウェルが批判した、左派は下層と自らを区別したというのはこういうことか。浮浪者らに対する視線に優しさがない。あるのは批評。しかし、やはり下巻まで読もう。2022/01/18
ラウリスタ~
6
この姉妹編のスコットランド紀行よりは面白さは落ちるかな。スコットランドと比べて新鮮味というか、驚きがない。田園はいいなあとか、工業都市は醜いとかそんなこと。プリーストリーのスノビスムが鼻につく。フットボールの試合よりまともなことに時間を使えないのか とかほっといてくれ。ただ、よくも悪くも筆者の主観が強いため、合う人には合うかも。この人の作品は面白かったんだけどな。あそれと、人種の混交による発酵作用という主張は面白い。いまの日本も西ヨーロッパも排他的になりつつあるから興味深い主張。2010/11/26
rbyawa
4
UK(英国)という国をそもそもイギリスと呼ぶのも欧米の国々から大雑把にイングランドと呼ばれることがあるからなのだそうだが、この本の場合、本当にイングランドに限定された内容で、スコットランドは他に姉妹本がある。とてもなんというか、深い本だと思う、工業地帯の街並みを見ても近代の発展に思いを馳せるし、かつてユダヤ人がいた土地を語る時は「しかし別の存在がいたほうが風通しがいいのだ」と言う、非常に視界が広い。普段からこんなことばっかり言ってると多分周囲が疲れるが。2009/10/28
左近
3
恥を忍んで告白しておく。プリーストリーの名前は知っているが、作品については何一つ知らない…前置き終わり。1933年、不況下のイングランドを旅した記録。チョコレートやタイプライター等の工場見学もしているが、有名な文筆家のために、このような機会を設けたのか、それとも、当時既に、今と同じく工場見学が一般向けに行われていたのか、気になるところ。そして、排他主義に対する批判は、そのまま現代社会に当てはまる。「身近な他所者に石を投げるケチな田舎町の馬鹿者たちの態度に似たものがある」とかね。2020/11/10
m-bone
1
初めて紀行ものの本を読んだが、地図とにらめっこしながら読みたくなる本。20世紀初頭のイングランドの文化や産業、娯楽などが垣間見えて面白い。2011/10/15