出版社内容情報
〈過ちを叱られた時は、部屋の出がけや階段の途中で、聞こえよがしにぶつぶつ言うこと、冤罪と思わせる効果がある〉--召使の奉公上の処世訓が皮肉たっぷりに説かれた「奴婢訓」。他に当時のアイルランドの貧困処理について述べた激烈な一文を付す。『ガリヴァ旅行記』の作者の逆説に満ちた諷刺を堪能できる味わい深い訳。
内容説明
“過ちを叱られた時は、部屋の出がけや階段の途中で、聞こえよがしにぶつぶつ言うこと、冤罪と思われる効果がある”―召使の奉公上の処世訓が皮肉たっぷりに説かれた「奴婢訓」。他に当時のアイルランドの貧困処理について述べた激烈な一文を付す。『ガリヴァ旅行記』の作者の逆説に満ちた諷刺を堪能できる味わい深い訳。
目次
奴婢訓(奴婢一般に関する総則;細則篇(召使頭;料理人;従僕;馭者;別当;家屋並びに土地管理人;玄関番;小間使;腰元;女中;乳搾り女;子供付きの女中;乳母;洗濯女;女中頭;家庭教師;宿屋における召使のつとめ;ディーンの家僕の守るべき掟))
アイルランドの貧家の子女がその両親並びに祖国にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
63
自分の思い通りにいかなさ過ぎて世をひねた人間嫌い、スウィフトによる絶対に真似してはいけない働く人の処世術。如何に気づかれずにミスを嫌っている奴に擦り付けるか、金をちょろまかすかがしっかり、書かれていて本当に身も蓋もねぇ(笑)紅茶党が失神しかねない紅茶の淹れ方(キャベツや魚の煮汁をぶち込め!)や女中と小間使いではずぼらな女主人のトイレ事情への対応が真逆なのに笑い転げる。後、「御虎子=おまる」という事を初めて知りました。そして最も題名が長い「アイルランド(以下略)」ですが、相変わらず、ショッキングな内容だ。2021/05/02
ひでお
8
スウィフトの辛口な風刺がたっぷり効いた召使いのための指南書の体裁を取った召使をこんな風にしてはいけないという資産階級のための本なのかな。当時の時代背景にうといので、何とも言えないですけど、この時代の召使は相当に反逆精神が豊かだったのかもしれませんね。 なお、巻末に訳者によるスゥイフト論があって、これがなかなか秀逸です2022/05/18
まどの一哉
6
さすがガリバー旅行記の作者が書きそうな風刺譚。スウィフトという人は自身も従僕を務めながら牧師を目指し、絶頂期は稀代の論客として一世を風靡した人。よって下僕の務め方を事細かく解説することもできる。2023/02/07
sakanarui2
5
お屋敷に仕える使用人がいかに仕事をしている振りをしながら適当にサボリ、役得に預かりうまくやるかといった処世術を、バトラーやコックなど職種別にまとめている。ガリヴァー旅行記を書いたスウィフトの遺作(未完成らしい)。封建制度の中で差別されながらも、逞しくしたたかに生きる使用人たちの生態を面白おかしく好意的に描いた本…だとばかり思って読んでいたのだけど、解説を見るとどうやら全くそうじゃなくて、堕落した使用人たちの悪習を(権力者の側から)暴き立て告発する風刺だったようだ。2024/04/07
kanaoka 56
4
当時(17・18世紀)のイングランド・アイルランドにおける状況、貴族、ジェントリ、その下僕、大衆の状況や生活実感、イギリス国教会と自由思想の新旧思想的対峙等々、そもそも理解できておらず、その風刺となると、余計に難しかった。イメージとしては分かるけれども・・・2022/09/28