出版社内容情報
『詩経』と並ぶ中国文学の源流。現実世界からの追放、天上遊行、天に帯する疑義、神々とのふれあい──南方楚の独自の自然・神話・文化を元に、戦国末の大きく変動する時代の中で生まれ、屈原伝説と結びついて伝承されてきた楚辞文芸。今なお謎に包まれたその歌謡群は、全体を流れる悲哀の中にも、強靱な精神が息づいている。
内容説明
詩経と並ぶ中国文学の源流。現実世界からの追放、天上遊行、天への疑義、神々とのふれあい―南方楚の独自の自然・文化伝承を元に、戦国末の激動の中で生まれ、屈原伝説と結びついた楚辞。今なお謎に包まれたその歌謡群には、悲哀の中にも強靭な精神が息づく。
目次
離騒第一
九歌第二
天問第三
九章第四
遠遊第五
卜居第六
漁父第七
九辨第八
招魂第九
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
95
詩経は知っていたのですがこの作品は知りませんでした。物語のような作品や歴史作品の様なものがありかなり昔からこのようなものが創られていたようですね。日本でいrば万葉集の様なものなのでしょうか?注釈が丁寧でわかりやすく読めました。ただこれでも全体ではないということなので全体はかなりだいぶなのでしょう。2021/07/30
崩紫サロメ
21
旧版は1935年、待望の岩波文庫版『楚辞』。屈原・宋玉といった個人に強く結びつけた読みではなく、「楚辞文芸」として読み解いていく。例えば「離騒」について、屈原の話とは一旦切り離し、形成者たちは被害者意識を強く持ちながらもみずからの独自性を主張しようとした、など。また「九歌」において宗教的な世界観への没入が困難になっていく中で俗的な時間の持つ意味について関心を持とうとしている、など帯の「宗教儀礼から文芸へ」という指摘が様々な場面で成される。注釈・解説が充実しており、『楚辞』の入門書としても良い。2021/08/03
roughfractus02
13
白川静は「辞」は耳で聞く文学であり、文字を目で見るそれと区別した。後世、屈原作なる伝承が疑われ、様々な説が林立した本書だが、冒頭の「離騒」に始まる四句ごとに変わる脚韻の規則性には、この韻文が歌として伝えられたことが書き下し文にも垣間見える。訳者によれば天地開闢に始まる「天問」が巫覡集団内の教理問答の相伝を思わせることから、紀元前の春秋戦国期の中国南方の神下ろしの儀式が背景にあることも想像できる。読みながら、人間同士の水平的コミュニケーション空間に屹立する神に通じるシャーマニズムの垂直の時空を思い浮かべる。2023/05/11