出版社内容情報
十川 信介[トガワ シンスケ]
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内容説明
「先生は相手の心の純不純をかなり鋭く直覚する。そうして相手の心を細かい隅々に亘って感得する」(和辻哲郎)。同級生、留学仲間、同僚、教え子、文学者や編集者、禅僧に担当医に芸妓、ともに暮らした家族やお手伝いの人まで―同じ時間を過ごした49人が語る、記憶のなかの素顔の漱石。
目次
1(「猫」の頃(高浜虚子)
腕白時代の夏目君(篠本二郎) ほか)
2(夏目先生を憶う(吉田美里)
私の見た漱石先生(木部守一) ほか)
3(漱石君を悼む(鳥居素川)
始めて聞いた漱石の講演(長谷川如是閑) ほか)
4(雨月荘談片(真鍋嘉一郎)
漱石先生と私(佐藤恒祐) ほか)
5(松山と千駄木(久保より江)
真面目な中に時々剽軽なことを仰しゃる方(山田房子) ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
142
夏目漱石と少しでも接触のあった人々が漱石についての思い出を語っています。これまでどこかに発表されたものばかりなのですがこれ1冊に49人がまとめているということなので壮観です。漱石の人物がよくわかるような感じです。本当に漱石が好きな人向きで、いきなりこれを読むよりかはやはり作品をいくつか読んで、自分に合っている作家であると感じたら読むのがいいのではないかと思われます。2016/05/14
Kajitt22
28
漱石の身近にいた人々の回想文、あるいは談話を文章にしたもの。読みながら声に出して笑ったことも数度あり家人から訝しがられた。漱石から花の名を尋ねられた植木屋の話が良かった。随筆や小説とはまた違う生身の漱石が感じられる。独特のアイロニーとウィットはロンドン留学のたまものだろうか?今年の漱石忌には是非再読を。2019/02/06
kaoru
16
芥川龍之介の言う「夏目先生の人格的マグネティズム」とはどういうものか気になっていたが、この49名の追想は漱石の複雑な、だが人を引きつけてやまない人間性を伝えてくれる。教え子や朋輩ばかりでなく、子供たち、お手伝いや京都の芸妓の回想からは時に精神的に不安定でも奥深く、江戸っ子らしく洒脱で茶目っ気のある人柄が感じられる。修善寺で漱石の命を救った森成医師の追想は医師らしい冷静な記述ながら息を飲むような迫力。優れた知識人であり教育者としても大きな影響を及ぼした漱石の実像が伝わってくる著書。2018/06/22
ぱすこ
9
書店で見つけ、さすが没後100年!と小躍りして購入。他の方のレビューにあるように、自分が読んでいても、「え、寅彦先生のでこれ?」などの肩すかし感は最初あったが、編者の方のあとがきにあるように「親疎の別なく」選ばれたのが、漱石の人となりをまた浮かび上がらせる効果がある紡ぎ方となっていて、結果的に満足した。自分が、漱石崇拝者らのフィルターを通して、作品を超えて漱石自身にはまったからかもしれないが、その点、これは漱石本として初心者向きではないかもしれない。2016/05/08
よし
8
「同級生に留学仲間、同僚、教え子、そして家族・・記憶の中の素顔の漱石」松山、熊本、一高時代の先生の授業風景、人となり、エピソードが教え子たちによって尊敬と敬意をもって、温かく描かれている。「フィンガーボールの逸話2題から、デリケートの意味を教える」授業はすごい。寅彦の短歌も漱石への思慕が深い。「マント着て黙りて歩く先生と 肩を並べて江戸川端を」妻 鏡子「・・お父様は絶対に笑わなかったよ。ちゃんと親切におしえてくれた。」「菫程な小さき人に生まれたし」漱石の人間性がよく表れている。2019/01/30