出版社内容情報
学力格差や貧困問題の解決策として浮上している「家庭教育支援」の強化は、社会に何をもたらすのか。日本における三歳児神話の根強さや社会に流布する家庭・親像、戦前の国家政策、改正教育基本法とのつながり、諸外国の支援のあり方、憲法改正論議との関わりなど、「国家と家庭」にまつわる事例から検証する。
内容説明
学力格差や貧困問題の解決策として浮上している「家庭教育支援」の強化は、社会に何をもたらすのか。日本における子育て観、「親学」推進運動との関係、改正教育基本法とのつながり、戦前の家庭教育振興や憲法改正論議との関わりなど、「国家と家庭」にまつわる事例から検証する。
目次
1 家庭教育支援法案とは
2 「外堀」を埋めるかのような「国民運動」
3 教育基本法「改正」とのつながり
4 再びの母性愛・三歳児神話の強調?
5 家庭教育への介入―すでにそれを私たちは経験している
おわりに―家庭とは誰のものか
著者等紹介
木村涼子[キムラリョウコ]
1961年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門分野はジェンダーと教育研究、近代日本のジェンダーに関する歴史社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう。
38
家庭の中にまで国家が介入する懸念が強い家庭教育支援法です。「親学」と称し子どもをめぐる問題をすべて親に責任があるとする高橋史郎の論理とこの法案がとても似ていることがよくわかります。また教育勅語推進や改訂教育基本法とも繋がっていることがわかりました。国家が徳目を並べ、家庭のあり方に介入するのは、とても危険だと思います。また、国家が介入しながら家庭の自己責任を押しつけるというものだとも思いました。介入はするが国家責任は果たさないという身勝手な理屈だと思いました。2017/06/02
かばお
7
僕は、男らしく!って押し付けられるの嫌だ。自分がされて不快なことを人にしたくないから男らしさや女らしさと押し付けることはしない。男はソト、女はウチも支持できない。日本の中枢にいるのはそういう教育を受けてこなかった人たち。戦後に切り捨てられたはずの考えが、持ち上げられるのは何故?2017/09/01
フム
7
自民党が議員立法として成立をめざす「家庭教育支援法案」の危うさについて書かれたもの。家庭教育支援という好ましい政策につながるかに見える法案が、国家による家庭、私生活への介入の危険をはらんでいるという。家庭教育への介入は決して新しくはなく、私たちはすでに経験している。最近も話題の教育勅語は国家のために滅私奉公し、命を投げ出す国民の教育に成功した。さらにファシズム期の国家は家庭にも介入を進める。1930年に文科省が出した「家庭教育振興に関する件」の全文を読んで、自民党の家庭教育支援法案との類似性に驚愕した。2017/08/21
ミヒャエル・安吾
5
今、また、日本人は「同じ石」で躓くのか。2017/07/20
matsu
5
グローバル社会では出来るだけ個人個人に合う多様な教育を施せる施策が必要かと思う。その点家庭教育支援法の理念は真逆であり時代にそぐわないのではないかと思う。2017/06/11