出版社内容情報
臓器移植法の改定により、「脳死」が「人の死」とされ、家族の承諾だけでも全年齢で臓器提供が可能になった。7月の本格施行を前に、知っておきたい事実や脳死・臓器提供についてのさまざまな声を伝える。
内容説明
日本の社会では今、「いのち」はどこに向かっているのだろうか。臓器移植法の改定により「脳死」が「人の死」とされ、家族の承諾だけでも全年齢で臓器提供が可能になった。本格施行を控え、多くの人が遭遇しうる「ご家族の臓器を提供しますか」という問いに対し、知っておきたい事実や脳死・臓器移植をめぐるさまざまな声を伝える。
目次
1章 知っておきたい、考えたい、脳死・臓器移植13のこと(脳死・臓器移植とは何か;日本における脳死・臓器移植;2009年の臓器移植法改定;脳死とは実際はどのような状態なのか ほか)
2章 家族として脳死と臓器移植を経験して
3章 さまざまな声(脳死臓器移植は愚行である;脳死移植を考える;小児脳死診断基準と長期脳死;脳死移植について ほか)
著者等紹介
小松美彦[コマツヨシヒコ]
1955年生まれ。東京海洋大学海洋科学部教授。専攻は科学史、生命倫理学
市野川容孝[イチノカワヤスタカ]
1964年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻は医療社会学
田中智彦[タナカトモヒコ]
1967年生まれ。東京医科歯科大学教養部准教授。専攻は政治哲学、思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
黒瀬 木綿希(ゆうき)
119
本書は臓器提供がいかに非人道的であるかといった否定的意見”だけ”をまとめた小冊子。したがって内容が偏り過ぎている感も否めなかった。改正臓器移植法が施行される直前に発行された本なので今となっては参考にすべきデータが古いのは致し方ない。ラザロ徴候や、臓器を切り出す際に脳死患者へ麻酔や筋肉弛緩剤の投与が行われていることは殆ど報道されておらず、それもそれで臓器提供のメリットだけを伝えており公平さに欠けるのでその事実を知るのは大事なことだ。2021/03/23
アカウント停止
32
脳死、臓器移植について考え、万が一の時に判断するための一冊。物事には二面性があるにも関わらず、聴こえてくるのはレシピエント側の声ばかり。2010年、十分な審議がされずに施行された臓器移植法がいかに悪法か、本書を読むとよく分かる。様々な問題点が挙げられていて、ここには書ききれない。移植希望者も弱者だが、自分の意思を表現できない脳死患者はもっと弱者だ。「命のリレー」という美談に惑わされず、事実を知った上で判断すべきだ。人間の臓器はロボットの部品ではないのだから。2021/02/20
とうゆ
13
2010年に脳死臓器移植法が改正されたことはあまり知られていない。オプトイン方式からオプトアウト方式への変更や脳死臓器移植の年齢制限解除など、大きく変わったのにもかかわらずである。死の定義というのは、人間ならば誰にでも関係があることであるのだから、今まで脳死について何も考えてこなかった人も、少しぐらいは興味を向けても良いのではないか。この本は薄く読みやすいので、その第一歩にうってつけだろう。2016/01/19
ゆで卵
3
いずれ死ぬ人なのだから、どうせなら助かる人のために臓器を役に立てよう・・・という簡単な発想では上手くいかないということがこの本を読むと分かります。脳死とは一体どのような状態か。その考えは実際に経験した人としていない人ではこんなにも差があるんだ2010/06/01
lily
2
脳死・臓器移植問題のエッセンスが詰まった良著。経緯から科学的見解までを丁寧に追っている。生命倫理会議の出席者が著者なので全員反対なのは分かるが、少し中立性に欠けると感じた。授業のベースに使いたい。2017/01/15