出版社内容情報
権力分立論はどのようにして姿を現したのか。一八世紀後半のブリテン帝国における『法の精神』の受容に焦点をあてることで、モンテスキューからアメリカ合衆国憲法制定時のマディソン、ハミルトンに至る政治思想史を精緻に叙述する。権力分立論の通説的理解を大きく修正し、その成立過程に新鮮な読み直しを迫る画期的研究。
内容説明
立法・行政・司法の抑制均衡という常識を源流から問い直す。モンテシュキューからアメリカ合衆国憲法に至る政治思想史。通説を大きく修正する画期的研究。2021年第43回サントリー学芸賞思想・歴史部門受賞。
目次
第1部 鏡の国のモンテスキュー?―混合政体論と権力分立論の重なり(1748~1765)(第1章 『法の精神』における混合政体/権力分立と二つの裁判権;第2章 仏英における『法の精神』受容とブラックストン『イングランド法釈義』)
第2部 さまよえるブリテン人―帝国の誕生と、混合政体論の動揺(1763~1773)(第3章 総督と植民地―帝国的国制の態様;第4章 ミドルセックス選挙における混合政体論と権力分立論の衝突;第5章 植民地に裁判所を作る―1773年東インド会社規制法への道)
第3部 そうやって最も美しい〓が生まれる―帝国的国制のアメリカ的変容(1774~1792)(第6章 ケベック法とジョン・ディキンソン;第7章 1776年の邦憲法制定;第8章 マディソンの換骨奪胎―『フェデラリスト』のレトリックとリアリティ;第9章 ハミルトンの一点突破―『フェデラリスト』のレトリックとリアリティ)
終章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Go Extreme
2
鏡の国のモンテスキュー─混合政体論と権力分立論の重なり:法の精神における混合政体・権力分立と2つの裁判権 仏英における『法の精神』受容 さまよえるブリテン人─帝国の誕生と混合政体論の動揺:総督と植民地─帝国的国制の態様 ミドルセックス選挙における混合政体論と権力分立論の衝突 植民地に裁判所を作る─1773年東インド会社規制法への道 最も美しい噓が生まれる─帝国的国制のアメリカ的変容:ケベック法とジョン・ディキンソン 1776年の邦憲法制定 マディソンの換骨奪胎ーフェデラリスト ハミルトンの一点突破2021/04/25
Ra
1
『法の精神』から『ザ・フェデラリスト』までの受容史、「権力分立」論ひいては近代の統治機構論をめぐる抗争史について、通説・教科書的理解(マディソンはモンテスキューの正統継承者など)に挑戦する野心作。「本書を貫く一つの視座は、権力分立論が決してある時代、場所において一つに定まったものではないどころか、権力の集中を忌避する人々によって抗争的に切り出される議論であり、それゆえに意味内容が可変的で動態的である、と捉えること」(終章:303頁)にある。2021/07/17
tk
0
モンテスキューの議論はあっさりとした紹介だったが、イギリス帝国とインド植民地の関係、アメリカの植民地からの独立とその後の国家建設との関係というグローバルな視点を加味して、混合政体論から権力分立論への転換が詳細に読解されるところはよかった。視野の広さと先行研究への徹底した目配りがすばらしい。2022/02/19
check mate
0
テクストの精密な読解により、これまで「常識」とされてきた命題がくるりと反転して「謎」になる。2022/02/18
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- 和書
- うつくしすぎる自然博物