感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サアベドラ
14
衣食住や水車、製鉄業など、中世ヨーロッパの「もの」と「技術」を中世考古学の成果や当時の技術書の記述をもとに紹介し、同時にそれらが表象する中世の古代・近代との連続性や独自性を描き出す。著者の専門は中世フランス社会史。現在は早稲田大学教育学部教授。豊富な図版や非常に具体的な叙述のおかげで、中世の農村と都市の物質文化が手に取るようによくわかる。その上で、水車と領主制の関わりなど、それらの物質文化が社会や制度にどう関わっていたかもしっかり記述されており、類書のような単なる「物づくし」に終わっていない。オススメ。2014/01/31
人生ゴルディアス
7
12世紀から15世紀くらいまでのヨーロッパの技術的な発展を幅広く解説してくれる。というか著者も変だと述べているが、一部の時代においては中世人が毎日肉を500g食べていたとか、パンを0.5~1kg食べていたとか、本当なのかな…。よく言われる肉は一日200g程度、というのは原資料がなにかあるのではなく、後世の学者のよくわからない推計が独り歩きしていると別の本で見た気がするんだが思い出せない。三圃制が3年だからヨーロッパの不動産賃貸なんかはその名残で3年区切りとあったが、ぐぐるとフランスだけでした。主語がでかい2022/07/17
MUNEKAZ
2
中世ヨーロッパにおける「もの」と「技術」の発展についてまとめた良書。単に「もの」の進化を示すだけでなく、領主層・農民・都市民といった階級ごとのかかわり方の違いや、動力としての「水車」の登場のインパクトなど、その背景に至る部分まで面白く描かれている。古代末期の混乱から生き延びたヨーロッパ文明が、戦争やペスト、気候変動に揉まれながらも、次の大航海時代の繁栄へと繋がっていく様がよくわかる一冊でした。2017/07/19