出版社内容情報
すぐれた文学作品には、読み手をその世界へと巧妙に誘うための仕掛けが施されている。古代の物語、中世の和歌、近代の小説など、豊富な実例の読解を通して、文学表現に込められた仕掛け、さまざまな表現機構が浮かび上がる。表現を読み解き、より深く味わうための技法が身につく画期的な入門書。
内容説明
すぐれた文学テクストをめぐって、読み手の側の想像力と、表現それ自体が繰り出す魅惑的な挑発とは、どのように切り結んできたのか。日本語の文学表現が時代を超えて創り上げ、つちかってきた言葉の仕組み「表現機構」。それは、書き手と読み手の双方が、新たな創造性を求めて言葉との格闘を繰り広げる場であり、“言葉”“状況”“人間”の三者が、お互いに作用して拮抗し合うトータルな関係の場でもある。日本語で書かれた文学表現の魅力を解き明かす手掛かりを、具体的な解釈を通してさぐる画期的な入門書。
目次
1 ゆらぎ(多義性;引用;語りの自在性)
2 ふるまい(規範;縁語的思考;因果の転倒)
3 よそおい(人称;共同性;小説家)
著者等紹介
安藤宏[アンドウヒロシ]
1958年生。東京大学文学部教授。日本近代文学専攻
高田祐彦[タカダヒロヒコ]
1959年生。青山学院大学文学部教授。平安時代文学専攻
渡部泰明[ワタナベヤスアキ]
1957年生。東京大学文学部教授。中世文学・和歌文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひろゆき
4
特に第七章「人称」。言文一致体は話し手の顔が見えない話し言葉(つまり主観的)なのに客観的な三人称をよそおう。故にリアリズムに徹しきれない。それが日本文学の矛盾。三人称に一人称をすべりこませるめに、文末に「…た」と現在形の混合。時制あいまいな日本語だからこそできる妥協。開き直っての一人称私小説。おお目から鱗、多数。2015/06/26
Cell 44
4
内容をちらりと確認するぐらいのつもりで読んだが、つい一通り読んでしまった。古代から中世、近代の文学を「ゆらぎ」「ふるまい」「よそおい」という言葉から読み解いているが、それぞれの時代の表現の差異も踏まえつつ一貫した日本語の表現機構というものに目を向けているのに好感を持った。個人的にはI部「ゆらぎ」の第3章「語り手の自在性」が、かねてより念頭にあった「語る」と「書く」の関係などの疑問に一部解答を与えてくれるもので、最も面白く読んだ。2014/07/05