哲学の起源

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  • サイズ B6判/ページ数 245p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000240406
  • NDC分類 131
  • Cコード C0010

出版社内容情報

デモクラシーを超えてイソノミアへ

アテネのデモクラシー以前に、古代イオニアには自由ゆえに平等なイソノミア(無支配)が実現していた。滅びゆくイソノミアを記憶し保持するものとしてイオニアの自然哲学を読み直し、アテネ=デモクラシー神話を解体する。

編集者からのメッセージ
 デモクラシーは,今のところ最もましな政治体制と思われています.しかしそれが今や多くの欠陥を露呈していることも事実です.
 デモクラシー発祥の地と言われる古代のアテネにおいて,実はこの政治体制は,それ以前の古代イオニア社会に実現していたイソノミア(無支配)を,階級分化の進んだアテネ社会のなかで回復しようとする企てだったと,著者は大胆にも言います.この試みは結局うまくいかなかったのですが,デモクラシーの根源に,デモクラシーを超えるもっと自由で平等な社会の記憶が宿っているというこの洞察は,人間社会の秩序としてデモクラシーを最終的なものと思い込んでいる(だろう)私たちの貧しい政治的想像力を,激しく揺さぶり,みずみずしく蘇らせる力があります.
 愛や慈悲を説いて,差別や不平等を克服しようとした普遍宗教の登場するはるか以前に,自由であるがゆえに平等な人類社会があったこと,そしてそれが,普遍宗教も含めて後代にさまざまな形態をとりながら繰り返し(強迫的にすら)立ち現われてくるという考察は,網野善彦氏の「無縁・公界・楽」の世界にも通じる鮮烈なヴィジョンです.
 これを著者は交換様式Dの出現ととらえるわけですが,その再出現の世界史上何度目かのものが今まさに到来していると,著者は考えているようにも思えます.この瞬間を逃さず,それを新たな社会構想へと結晶させること,それが現代の喫緊の,そして最重要の思想の課題であり,また本書の究極的な狙いでもあるのではないかと,ひそかに考えている次第です.

■ 著者略歴
柄谷行人(からたに こうじん)
1941年生まれ.評論家.
著作としては,『定本 柄谷行人集』(全5巻,岩波書店),Transcritique: On Kant and Marx(The MIT Press),『世界共和国へ――資本=ネーション=国家を超えて』(岩波新書),『世界史の構造』(岩波書店)など多数ある.

■ 目次

はじめに

序 論
1 普遍宗教
2 倫理的預言者
3 模範的預言者

第一章 イオニアの社会と思想
1 アテネとイオニア
2 イソノミアとデモクラシー
3 アテネのデモクラシー
4 国家と民主主義
5 植民とイソノミア
6 アイスランドと北アメリカ
7 イソノミアと評議会

第二章 イオニア自然哲学の背景
1 自然哲学と倫理
2 ヒポクラテス
3 ヘロドトス
4 ホメロス
5 ヘシオドス

第三章 イオニア自然哲学の特質
1 宗教批判
2 運動する物質
3 制作と生成

第四章 イオニア没落後の思想
1 ピタゴラス
a 輪廻の観念  b 二重世界 c 数学と音楽
2 ヘラクレイトス
a 反 民 衆 的  b 反ピタゴラス
3 パルメニデス
a ヘラクレイトスとパルメニデス b ピタゴラス批判  c 間接証明
4 エレア派以後
a エンペドクレス  b 原子論 c ポリスからコスモポリスへ

第五章 アテネ帝国とソクラテス
1 アテネ帝国と民主政
2 ソフィストと弁論の支配
3 ソクラテスの裁判
4 ソクラテスの謎
5 ダイモン
6 ソクラテスの問答法
7 プラトンとピタゴラス
8 哲人王
9 イソノミアと哲人王


附録 『世界史の構造』から『哲学の起源』へ
地図
古代ギリシア史年表
思想家年表


岩波書店ホームページより

内容説明

アテネのデモクラシーは、自由ゆえに平等であった古代イオニアのイソノミア(無支配)の成功しなかった再建の企てであった。滅びゆくイソノミアを記憶し保持するものとしてイオニアの自然哲学を読み直し、アテネ中心主義的に形成されたデモクラシーの神話を解体する。『世界史の構造』を経て初めてなった政治的想像力のみずみずしい刷新。

目次

序論
第1章 イオニアの社会と思想
第2章 イオニア自然哲学の背景
第3章 イオニア自然哲学の特質
第4章 イオニア没落後の思想
第5章 アテネ帝国とソクラテス
附録 『世史の構造』から『哲学の起源』へ

著者等紹介

柄谷行人[カラタニコウジン]
1941年生まれ。評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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1 ~ 5件/全5件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

funuu

19
宗教の変化も、このような交換様式の変化から見ることができる。簡単に言うと、アニミズムでは、万物にアニマ(霊)があると考えられている。ゆえに、人はアニマを抑えないと、対象と関係することができない。たとえば、動物を狩猟することができない。その場合、アニマに贈与することによってそれを抑え、対象をたんなるも物にしてしまう。それが供犠である。死者の埋葬・葬礼も、贈与によって死者の霊を抑えるためになされる。呪術もまた、このような贈与交換によって成立する。アニマに贈与することによって、自然をたんなる物として扱えるように2016/08/07

RIN

15
世界史の構造では語られなかった、交換様式A(氏族的互酬交換)をより高度な次元で回復した交換様式Dが宗教的な形をとる事なく現れるにはどうすればいいのか、そのヒントをイオニアの政治と思想に求めた結果出来上がったのが本書である。著者はデモクラシー(多数派支配)をイソノミア(無支配)の堕落した形態であると捉え、プラトンとソクラテスの思想の乖離性を追求する。正直理解には遠く及ばないが面白い。著者の魅力は読者に易しく伝えようという意思を一切感じさせない、その孤高さだと思う。美しい知性は容赦がない。だから私は本を読む。2022/11/12

mstr_kk

8
僕が昔から気になっていることや最近気になっていることをどんどん扱ってくれていて、とても面白いです。特にソクラテスの話には感動しましたし、ゼノンのパラドクスやホメロスについての話は眼から鱗でした。それにしても、まるで柄谷さんが解脱でもしてしまったかのような分かりやすさが異様でもあります。すべてが一撃で明瞭に説明され、文章として説得力もあり、逆に心配に……。2014/12/21

hitotoseno

8
イソノミア探究の書として話題になった本だが、むしろ本領はこれまで判然としなかったところが多かった、ソクラテス以前の哲学者の系譜をしっかりとした論理に基づいてまとめ上げた点にあるだろう。単に歴史としてまとめあげるだけでなく、イオニア派の自然哲学をスピノザへとつなげ、ソクラテス=ディオゲネスの打ちだした世界市民をカントの線へと持っていくという、ギリシャの哲学者を西洋哲学史の中へと組みこんでみせる技術も流石のお手前である。起源は忘却されることによって始まる、という『日本近代文学の起源』以来のブレない手腕によって2013/03/04

壱萬弐仟縁

7
近代民主主義とは、自由-民主主義(26ページ)。先ほど読んだフクシマ論の仏人も民主主義をかなり取り上げていたが、この非効率だが社会にとっては必要な市民社会の礎をどう再考するか。自由と平等の同時的追求は理想だが、なかなか難しい課題。自由市場で格差ができたのだから不平等があるので。古代ギリシアの場合、遊牧民や戦士的な人は手仕事を軽蔑したという(86ページ)。土着的で一つのものにこだわる流儀に同感できなかったのだろう。流動的で攻撃的な人には理解できない感性の部分か。アテネ市民の多くは貧しかった(190ページ)。2013/01/14

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