出版社内容情報
普遍的であるはずの「論理」と「合理性」。それは文化によって大きく異なり「価値観」とつながる。「文化の多様性」という言葉に逃げ込まず、それぞれ4つの原理を代表する日本・アメリカ・フランス・イランの思考表現スタイルから4タイプの論理と合理性を明らかにする。ポスト近代を生き抜く知恵となる比較文化論の集大成。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Haruki
4
日本人が米国では非論理的と見なされる背景に、文化に根差した教育による論理構造の差異を見出し、それを目的軸(技術目的-価値目的)とその手段としての知識軸(経験的知識、体系的知識)で4つに分類。技術-経験:経済原理→アメリカのエッセイを、技術-体系:法技術原理→イランのエンシャーを、価値-体系:政治原理→フランスのディセルタシオンを、価値-経験:社会原理→日本の感想文を、それぞれ教育プログラムや評価指針の調査具体例も交えて描き出す。ディセルタシオンでの弁証法による構想力、感想文での共感的、縁起的理解など新鮮。2024/01/02
はひへほ
3
いのほた言語学チャンネルの動画で紹介されていて買ってみた。教育原理の四類型に分けて、それぞれの代表としてアメリカ、フランス、イラン、日本の教育文化、思考表現スタイルを分析している。論理展開の仕方を作文や小論文の教育から、推論における因果や時間の解釈を歴史の教育から、その文化において何の能力に価値をおくかを大学入試から捉えていくアプローチを取っていて面白い。 どれくらい分類や分析が妥当なのか自分には判断がつかないけれど、文化の違いを見ていくのは間違いなく面白かった。2024/04/04
さわたろう
2
「論理的である」とは、文化的合意が双方にあって初めてそう認識されるという話は、非常に驚きだった。そこから、代表的な4ヶ国の論理性を、論文教育から見つめ直す解説。馴染み深いアメリカの論文形式は、経済的理由と評価基準の公正さに根差しているというのは、実感として納得できた。フランスの反証主義、イランの神秘主義、そして日本の共感性など、特色が明快に説明されており、何度も反芻しながら読んだ。自分はアメリカ的な文を書く人間だと思っていたが、そんなことはなく、骨の髄まで日本人だと再確認できた。非常に面白い本だった。2024/04/04
けっと
0
論理的・合理的と見なされる文章・思考が文化に依存することを理論と実証とで主張している。想定する理論は①教育の目的は人間性・価値観の獲得か知識・技能の獲得かで二分され、②重点を置く内容が体系的知識か経験的知識かで二分され、計4通りの教育原理が存在することである。次にそれぞれの教育原理の典型をアメリカ・フランス・イラン・日本の文章課題や歴史科目に求めて比較を行い、論理的・合理的である(≒評価される)思考表現形態が文化によって異なると実証する。論理的という感覚は万国共通と信じる自分にとっては意外な話が多かった。2024/03/10