内容説明
ハンセン病者への隔離政策が確立する一九三〇年代から、軍靴の音響くアジア・太平洋戦争期を経て、民主主義を謳歌する一九五〇年代まで―この激動の時代に、病者自身が描いた文学作品を研究・考察した十章から成る。ハンセン病者たちは、自分たちを抑圧し、抹消しようとする社会風潮や国家権力と、いかに向き合ってきたのか。また逆に、どのような言葉を駆使して抗してきたのか。終生隔離という極限状況に置かれた者が、いかにして「抑圧された生命を生きる意味」を紡ぎだすのかという普遍的な問題に挑む。
目次
隔離する文学―「癩予防協会」と患者文学の諸相
「断種」を語る文学―ハンセン病患者の文学にみる優生思想
“身振り”としての「作家」―北條民雄の日記精読
「癩」の「隠喩」と「いのち」の「隠喩」―北條民雄「いのちの初夜」と同時代
御歌と“救癩”―近代皇族の文学はいかに問い得るのか
「病友」なる支配―小川正子『小島の春』試論
ハンセン病患者の戦争詩(近くて遠い詔勅;隔離の中の“大東亜”)
「療養文芸」の季節―“弱さ”の自画像
文学が描いた優生手術―ハンセン病患者は「断種」をいかに描いてきたか?
著者等紹介
荒井裕樹[アライユウキ]
1980年、東京生まれ。2009年、東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員。専門は日本近現代文学・障害者文化論。ハンセン病・身体障害(脳性麻痺)・精神障害の当事者たちの文学活動や社会運動の研究、および医療施設における自己表現活動の支援に取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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