感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
29
日本陸軍の主力小銃として、日本陸軍滅亡のその日まで、主力小銃であり続けた三八式歩兵銃を開発した、陸軍技術少将有坂成章の評伝である.幕末の岩国に生まれ、長州閥の棟梁、山縣有朋に才能を見込まれた、有坂は日露戦争直前に一挺のライフルを完成させる.それが三八式の原型となる三〇式歩兵銃である.日本人の貧弱な体型でも、衝撃が軽く、長射程で低伸弾道、小口径で大威力という文句なしの名銃である.しかし、有坂はその功を誇ることも無く、世を去った.近代世界に対応する為に身命を削って倒れた男の姿を、読者は追体験できる名著である.2014/11/15
takeshi3017
2
副題に「日露戦争の本当の勝因」とある。筆者は日露戦争の勝因を当時陸軍で正式に採用されていた「有坂銃」に求め、その性能と開発者である有坂成章の生涯を追っていく。明治時代、陸軍の基本的な作戦単位は「歩兵師団」(または旅団)だった。歩兵師団が戦場に持ち出して使う火器は、主に、野砲と歩兵銃である。日本軍でもロシア軍でも、これには変わりはなかった。ここにひとりのテクノクラートが登場する。有坂成章である。有坂は有坂砲と有坂銃と呼ばれる武器を開発し陸軍に正式採用されるが、その性能は有坂砲と呼ばれる野砲は命中率が悪く、→2023/12/23