内容説明
絵画、音楽、映画、読書、住居、インテリア、料理、服装、スポーツ等の趣味から、しぐさ・立ち居振る舞い、言葉づかい等の日常のなにげない行ないまで、名著を解読。趣味と階級はいかに結びつくか。
目次
序 差異と欲望
第1章 「資本」概念の拡大
第2章 社会空間とライフスタイル
第3章 ハビトウスの構造と機能
第4章 差別化のメカニズム
第5章 日本社会とディスタンクシオン
結論 階級闘争から分類闘争へ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yuma Usui
24
ブルデュー著「ディスタンクシオン」の邦訳者による解説本。ディスタンクシオンとは「卓越化」を意味し、私たちは絵画や音楽などどんな趣味を好むかにより他者との違いを表現しているとしている。支配階級、中間階級、庶民階級の3つの階級が存在し、趣味の良さ、上品さなどは文化資本や経済資本を継承する支配階級によりその方向性(文化的正統性)が決められているとの説明は面白い。本来的にそれを行う必要がなく自由な贅沢趣味と与えられた生活条件で選択する必要趣味との差も余裕の有無の指標として理解しやすい。階級問わず皆衒示的だと思う。2020/05/12
きいち
12
『ディスタンクシオン』のあの大変さが何だったのだろう、というくらいとにかく分かりやすい訳者自身による解説書。でも決して単純化されてるわけじゃなく、静的な社会空間から正統性をめぐる動的な闘争までしっかりと語られている。構成と文章のこの違いは、ブルデューが闘わねばならなかったヨーロッパの常識の壁の大きさと、差別化が日常の今の我々の接続しやすさの差だろう。少なくとも我々は格差や階級を天与のものとは考えないし、学歴だろうが地位だろうが上品さだろうが、別の尺度で価値転覆というのは「いつものこと」なのだから。2013/07/13
左手爆弾
8
『ディスタンクシオン』の邦訳者による解説書。他人との様々なディスタンクション(差異・区別)こそが「私」であり、社会とはそうした差異の群れだという宣言から始まる。そして、この差異こそが様々に異なった欲望を生産する。文化資本の概念は、ブルデューが最初に言い出したわけではないが、それを単なる比喩に留めず、体系的に整備したことにある。何を好むかという趣味の問題は、個人の経済的・社会的・文化的資本の差異によって決まる。それぞれの場に応じた資本の量があり、それが階層を作っていく。2017/01/17
hirooo
5
P・ブルデューの主著『ディスタンクシオン』の解説書。ブルデューの著書は難解で鳴っており、このような本を読んでおくと非常に理解が進む。ただ、この本はあくまで解説書。ブルデュー独自の用語の解説はしっかりしているが、その用語がどのような場面で使われ、いかなる分析に資するものなのか判然としない部分もある(戦略、実践感覚など)。当然ながらこの一冊だけでブルデューの思想を征服できるわけではない。そこさえ踏まえられれば、かなりの良書。あと、装丁が美しすぎて驚いた。個人的にもっともデザインが好きな本2009/06/18
ぽん教授(非実在系)
4
ブルデューの主著『ディスタンクシオン』の難解さをかなりわかりやすくかみ砕いた内容となっている。文化資本→ハビトゥス→それぞれの差異化を巡る戦略、という流れ自体はフランスであっても日本であっても変わらない。絶えずディスタンクシオンが形成されていく人間の欲望の流動化こそ社会的格差の固定を打破するという結論には、ある種のウェーバーの責任倫理的な感じさえ思わせる。ケインズやサイモンと同じく、動と静、短期と長期、合理と非合理への感覚に溢れた現実的な議論であるといえよう。2015/11/17