内容説明
「戦後の来歴」に拘束され、近代以降の歴史を否定的に見る習慣が身についた日本人。しかし「戦後の来歴」自体、ひとつの物語にすぎない。国際社会で日本が演じた事柄や天皇の存在について、戦後五十年を経た今こそ、幕末以来の「国体」観念や「憲法」を中心に見直し、新たな物語を語るべきではないか。気鋭の政治思想史学者による「日本の来歴」探求の提唱。
目次
序章 相互理解とは何か
第1章 「選択する自己」から「物語る自己」へ
第2章 国家の来歴
第3章 戦後日本とその物語
第4章 日本国憲法とフランス革命の物語
第5章 近代日本における国家制度の形成過程
第6章 象徴天皇制度と日本国憲法第一条
第7章 近代国際社会と日本
終章 ふたたび相互理解について
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Honey
8
自分自身の感覚について、なんとなく「日本人だから」…と思いつつ、その正体について深く追求したことがなかったあれこれの物事について、非常に緻密に考察されており、約20年前のものとはいえ、大変新鮮な刺激を受け勉強になりました。2014/12/15
メロンサンデー
3
戦後五十年を迎えた夏に書き上げられている。戦後の日本人を拘束した、1945年当時の連合国側の巨大な政治意思を体現するものであった、近代以降の日本の国家の営みを否定的に見る見方から距離を置き、今日的な実践的関心に立って日本人自身が日本の過去を物語るスタート地点を提供した、日本人として実践的で現実的な立場に立った思いやり深く優しい気持ちに溢れる論文。この論文は、日本人ひとりひとりが日本国家の物語を探索し、活発な意見の交換がなされるような状況が生まれてほしいとの願いで結ばれている。2014/03/18