内容説明
二〇二一年三月に刊行された『フーコー研究』(岩波書店)をめぐって、同年三月末に京都大学人文科学研究所主催で開催されたシンポジウム「狂い咲く、フーコー」の四時間半にわたる議論に、各発言者が加筆。四〇〇名にも及ぶ聴講者を集めたオンライン・シンポジウムの全記録。二〇世紀フランス現代思想の代表的知識人ミシェル・フーコー。その新たな研究が日本発ではじまっている。京都大学人文科学研究所が二〇一七年より三年間にわたって活動した研究会の記録を基にして、『フーコー研究』が刊行された。その内容・テーマを各執筆者がダイジェストに紹介し、議論する。最新のフーコー研究への誘いの書。総勢三二名の執筆者は、専門領域も異なり、それぞれの分野から、精緻なフーコー研究がなされている。フーコー研究者のみならず、初学者が紐解ける“入門の書”。
目次
第1部 フーコーの全体像・読む「方法」・新自由主義(フーコーの巨大な重力;真理と虚偽、宗教と無神論、理性と非理性、文化と野蛮;フーコー像をどう捉えるか;フーコーを読む「方法」;フーコーと新自由主義 ほか)
第2部 パレーシア・生と死と文学・主体/精神分析(「なんでも語ること/忌憚なく語ること」から「真理を語ること」へ;パレーシアの核心にあるもの;「自身の理性を用いる勇気」と「真理(へ)の勇気」
主体の問題と精神分析
主体の生と死をめぐって ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ザフー
18
沼の底に蠢くであろう新自由主義にまつわるマルクス主義、フェミニズム、レイシズム、ポストかエビデンだか阿鼻叫喚と怒号に慄きつつ、ふと水面に目をやると狂い咲く花火たち。学生たちの間に席に着き語る思想家の写真を表紙に誂うこの本は、『フーコー研究』という大著を記念するシンポジウム、ズーム会議の記録。前半、現代の問題の多岐に根を張る存在であるフーコーを知るが、ここで大事なのは「パレーシア」という概念。「忌憚なく、なんでも語る」という語源の言葉はフーコーによって「真理」というニュアンスを授かる。ここからが面白くなる。2022/06/14
またの名
10
『狂気の歴史』の思想家に対しピッタリ過ぎる書名。悪をなして真実を言う古代の営みパレーシアにあたかも合致するかのように「本当の話をするので叱られる」と自認してる元首相なんてパレーシアに注目した思想家フーコーとは別物、と即座に切り離し得ないフーコーの多層性が伝わるZoom会議の記録。新自由主義による自由競争が結局のところ全体主義っぽい社会を生み出してると言わざるを得ない現状が明らかな中、新自由主義はマイノリティの実践(つまり倒錯的なあれこれ)に寛容と述べるフーコーの気持ちが両義的なのは、論者達の指摘する通り。2022/06/11
Mealla0v0
6
論集『フーコー研究』の公刊シンポジウムの書籍化本であるが、本書は論集の前に読んでも後から読んでも問題ないだろう。中心的な話題は、フーコーの新自由主義論、そしてパレーシア。個人的には、評者の森元庸介がパレーシアの重要性と難しさに触れた後で、挿話的に述べる「エウムーシア」が印象的であった。忌憚なく述べるというパレーシア的実践は時に身の危険を招くが、そこに「助け」があるということ。そして、この「助け」が「技芸」によるものであるということ。非常に興味深い。2022/03/06
Bevel
2
『フーコー研究』の副読本という感じ。全体のテーマとしては、新自由主義、パレーシア、真理あたりのようで、個人的にはどれも筋のよい出発点に見えないので、重田氏の視点に一番共感がある。それぞれの著者の論考の観点みたいなものが網羅的にわかるので、読むべき論文を見つけるのによいかなと。2022/06/17
mutu-bird
1
『肉の告白』が刊行され、フーコーの著作が「ほぼ」整理されたタイミングでまとめられた京大の『フーコー研究』の合評会を収録したもの。論文カタログとして面白い。今度手にとってみようと思った。フーコーが中絶解放運動にコミットしていたのは知らなかった。そろそろフーコーの著作に手をつけてみたい。2022/05/25