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内容説明
スロヴェニア文学の巨匠イヴァン・ツァンカルが描く豊かな抒情性と鋭い批判精神に満ちた物語。世界各国で広く紹介されているスロヴェニア文学をここに初めて一冊の本として日本の読者に送る。
著者等紹介
ゴドレール,イヴァン[ゴドレール,イヴァン][Godler,Ivan]
1962年リュブリャナ(スロヴェニア)生まれ。1987年リュブリャナ大学機械工学科卒業。1988年来日、1995年九州工業大学博士(工学)。2004年北九州市立大学国際環境工学部教授
佐々木とも子[ササキトモコ]
1958年福岡県生まれ。1980年福岡女子大学文学部英文学科卒業。1982年九州大学文学部独文学科修士課程修了。1985年九州大学文学部独文学科博士後期課程中退。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
7
2篇収録。掌編「一杯のコーヒー」は数ページだけど、じんと身にしみた良い作品。中編「使用人イェルネイと彼の正義」はなんとも微妙な作品。人の世に不正がはびこり神の正義が行われないことが、哀れな老人の姿によって綴られている。しかし私には、その老人の姿は年をとって考えが凝り固まり他の人の意見を耳にしない狂信者に見えてしまった。当時のスロヴェニアはオーストリー=ハンガリー帝国に支配されていたため、読者はイェルネイにスロヴェニアを、強欲なシータルに帝国をイメージして、不幸をかこっていたのだろうか。奇妙な味わいの物語。2013/05/07
刳森伸一
5
2篇のみ所収。「一杯のコーヒー」は数頁の掌編。傍から見れば些細だが自身にとっては重大な過去の行動に自責の念を募らせる話で、余韻を残す佳作。「使用人イェルネイと彼の正義」は、自身の正義が否定されたイェルネイが正当な審判を得るために放浪する物語。言いたいことはよく分かるが、イェルネイがあまりに頑固で世間ずれしているために、童話風説教譚に近付いており、小説として面白いかどうかは微妙なところ。2017/01/15
takao
2
ふむ2023/12/20
Fumitaka
1
『一杯のコーヒー』、すごくいい。19世紀の人とは思えない。スロヴェニアの教科書に何回も載ってるのも納得がいく。『使用人イェルネイと彼の正義』、『白痴』だ。イェルネイの言う「もの」は「所有物」という意味では必ずしもないが、そういう意味も帯びており、半ば寓話的。彼が文字通りの意味で「間違って」いるわけではないのは読者も納得するところだろう。イェルネイの望みはそれこそ社会主義革命とかではないのだろうが、しかし彼の求めるものは「昼間に正義を見つけるより、夏至の夜に金の宝物を掘り出す方がずっと簡単」(第15章)だ。2021/02/19
小丸
1
異常なまでの「正義」への執着が描かれた2作品。作者の繊細さがうかがえる。「使用人イェルネイ~」はヨブ記などの義人を思わせるが、主人公の頑固さと救済のなさにこの時代性が感じられる。2012/06/14