出版社内容情報
目の前に潜むもう一つの景色、影。歳を重ねることは影の深淵さを見つめること。日常が別の世界に見えてくる珠玉の短編集。光の当たらない影。目の前に潜むもう一つの景色、影。歳を重ね、影の深淵さを見つめるからこそ、忘れていた「生の豊穣さ」が見えてくる。日常があたかも「別の世界」に見えてくる、珠玉の短編集。
対話――まえがきにかえて
第1章 油揚げ 三つの穴 西日のさす家 柿の木坂 不思議な矢印
第2章 二重婚 敗ける身体 清水さんは、許さない 傷とレモン
第3章 帽子 塩をまきに 墓荒らし 水鏡 あみゆるよちきも
第4章 祝祭 象を捨てる 面影について
亀――あとがきにかえて
小池昌代[コイケマサヨ]
著・文・その他
内容説明
影とは存在の静かな証明書。目の前にひそむ、もうひとつの景色。影の深淵は「生」を照らし出す。追憶と予感にみちた、珠玉の掌篇集。
著者等紹介
小池昌代[コイケマサヨ]
1959年東京・深川生まれ。詩人・小説家。津田塾大学卒業。主な詩集に『永遠に来ないバス』(現代詩花椿賞)、『もっとも官能的な部屋』(高見順賞)、『ババ、バサラ、サラバ』(小野十三郎賞)、『コルカタ』(萩原朔太郎賞)。小説集には『タタド』(表題作で川端康成文学賞)、『たまもの』(泉鏡花賞)など多数。主なエッセイ集に『屋上への誘惑』(講談社エッセイ賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
79
自分では踏み殺せない“影を歩く” 13篇のエッセイに4篇の詩が載った本。歳月を重ねうるちに傷の痛みも和らぎ自分自身の一部となっていく〈傷とレモン〉、枯木のようにやせ細り、ひざに痛みのコブをつくって死んだ父の〈塩をまきに〉、一人出かけた徳島の旅先のフェリーから転落した夫の死亡の知らせに“死にたくて自ら死んだのだ”と直観する〈水鏡〉などが印象深い。表紙カバーに、「面影は実像ではない。空間に兆すもの。実像から生まれたもうひとつの像だ」という詩人の文章が重なる。2020/01/04
巨峰
67
私たちには影がある。それは人に踏まれても、わたしは自分では決して踏めない。もしかしたら、いつか影が消えるかもしれないし、飛んでいくかもしれない。小池さんの小説のとらえどころのなさは影ににているが、どことなく現世と常世につながっていて、いろんなものが私たちの見えないところにつづいている感じ。家族とか、父とか、母とか、子供とか、それは影のように私に付きまとうが影じゃないかも、もしかしたら私があなたたちの影かもしれないですね。2021/04/29
tom
20
小池昌代さんの新作。図書館で調べて発見。期待して読み始める。印象に残ったのは、粘着物になって消えてしまった夫の話。一年後に結婚する予定で同棲を始める。同棲を始めたのち、次第に関係性が変わっていく。男の姿かたち、振る舞いが変化していく。ある日男は、友人と称する知人を連れて来る。知人が男にマッサージを始める。そして、男は溶けて行き、残ったのは粘着物だけだったという話。こういう話と詩が書いている本。私にとっては、小池さん、どこかで変わってきたのかしらという感じ。2020/01/30
くさてる
19
ことさらに異界を感じさせるような内容ではないけれど、気がつくと、ふっと足元にそこへの入り口が開いているような作品集。短編?エッセイ?と詩が収録されていて、静かな雰囲気。怖いというわけではないけれど、なにかが違う。良かったです。2019/02/09
プクプク
12
不思議な世界観の小池さん独特のリズムと文章が好き。「傷とレモン」「水鏡」「柿の木坂」「象を捨てる」が印象に残った。 哀しみや老い、後悔というような影が「生」を照らし出す。すると本当の自分が見えてくるのかもしれない。2019/01/25