内容説明
あらゆる規範を失った政治が醜態をさらし、文学の終焉が語られて久しい。文学はこんにち、生へのアクチュアルな発信を断念し、政治的現実への無惨な絶望を前に、ついに自閉してしまうのか。大作『レ・ミゼラブル』を皇帝権力に抗っての亡命下に書き継いだユゴー、身をもって政治参加を生きたサルトル、グローバル化という民主主義の負の未来を見事に予言したトクヴィル…時代の権力とそれぞれの仕方で向き合った思想家たちの闘いに耳を澄ます。ここには断念することを知らない精神と、私たちの同時代への驚くべき予言と、言葉と権力との秘密めいた関係をめぐる明晰な意識とがある。著者の半世紀を賭けた文学的試行を集成する「文学と政治」論集。
目次
1 『レ・ミゼラブル』の現代性―ヴィクトール・ユゴーとその時代(歴史小説としての『レ・ミゼラブル』;ユゴーとふたりのナポレオン―『レ・ミゼール』から『レ・ミゼラブル』へ;『レ・ミゼラブル』と現代)
2 文学と政治参加―ジャン=ポール・サルトルとアルベール・カミュ(サルトルと私;神も理性も信じない人間―アルベール・カミュの『異邦人』;もうひとつの文学行為―フランスの文学者たちと裁判批判;歴史への責任―アンドレ・グリュックスマン、サルトルを語る)
3 グロテスクな民主主義―トクヴィルとフローベール(トクヴィルの現代性;恋愛・金銭・デモクラシー―『ボヴァリー夫人』の時代)
著者等紹介
西永良成[ニシナガヨシナリ]
1944年生まれ。東京大学フランス文学科卒業。同大学院に入学後、1969‐72年、フランス政府給費留学生として、パリの高等師範学校およびソルボンヌ大学に留学。1978‐80年、フランス国立東洋語学校講師。2008‐10年、パリ・日本館館長。現在、東京外国語大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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