出版社内容情報
中島岳志と4人の論者(星野智幸、大澤信亮、重松 清、開沼 博)が真摯に言葉をぶつけ合った対談集。『週刊金曜日』掲載時に
収録しきれなかった部分を全て収録。
目次
秋葉原事件から東日本大震災へ
第1章 星野智幸―可能性の文学(無限ループ;オンとオフ ほか)
第2章 大澤信亮―自己と対峙する批評(自己を問い直しながら;実践的な言語使用とは ほか)
第3章 重松清―じっくりと染みこむような言葉を(母親との関係;希薄化するナナメの関係 ほか)
第4章 開沼博―福島のエージェンシー(揺らぎをもった主体;代理表象の権力性 ほか)
著者等紹介
中島岳志[ナカジマタケシ]
1975年大阪府生まれ。京都大学大学院アジアアフリカ地域研究研究科博士課程修了。現在、北海道大学公共政策大学院准教授。2009年より『週刊金曜日』編集委員。著書『中村屋のボース』(白水社)で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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15
今は「承認格差」の時代である。権力者や金持ちよりも「普通」が憎い。「何の罪もない人を…」は事件報道の常套句だが、罪がないからこそ敵意を向けられる▼重松清「多分<不幸>を取り除くのは政治だと思う。だけども、<鬱屈>を取り除くのは政治じゃない」中島「なぜならそれは、個人の内面の価値に踏み込むことになるからです」…時代が不機嫌な今こそ、胸に留めておきたいと思った。2018/06/14
しゅんぺい(笑)
3
中島岳志さんの対談集。 テーマはざっくりわけると、二〇〇八年にあった秋葉原事件と東日本大震災による原発事故。 そのような、現代日本における大きな出来事において、吐き出されては簡単に消えていく言葉を問題にし、より重要な、今後も続いていくであろう言葉、思いを模索している本。 秋葉原事件を、ここまで中立的な目線から分析できている内容は珍しいんじゃないかな。本書の内容にもあったとおり、今はもうあの事件はほとんど、忘れられているような気がするし。それはとても残念なことですが。 2012/02/19
とんこつ
3
原発に関して。反原発の立場をとりつつも安易な反対論には適度な批判を加えつつ、二元論を超えた道を慎重に模索しているという印象を受ける。保守思想なのに保守から疎まれる中島さんならではのスタンスがよく出ている。ことばに関して。ことばが人の心を打つかどうかを決定的に分けるポイントは、それを紡ぎだすプロセスの中で自分自身が揺らいでいるかどうかだ。瞬発力を競い合うように批評合戦をするのではなく、深い内省の内に湧きでたことばを紡いでいく。その点に於いて、本書が2011年末に出版されたということには深い意味を感じる。2012/01/11
釈聴音
3
「言葉」の持つ力/無力/暴力について。「沈黙」する/「聴く」/その〈場〉に「居る」ということの困難さについて。2011/12/20
林克也
1
それぞれ気付かされ、なるほどな、と納得する対談ではあるが、中島さんと対談者とは意見の不一致がないし、なんか予定調和、お互いが上手に話をまとめちゃったのかな、ということを感じました。でも今、身内?で意見の同意をみて盛り上がっている場合ではないでしょ、あなたたちのような教養のある知的な人たちは、この世界を劣化させる連中を論破し行動を変えさせるのが仕事でしょ、と思います。それと、話のテーマとして、母親、教育、承認欲求、劣化政治等はあるが、あの重松さんでさえ「父親」という切り口がなく、どうして?と思います。2015/05/05