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司法的同一性の誕生―市民社会における個体識別と登録

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  • サイズ A5判/ページ数 461,/高さ 22cm
  • 商品コード 9784905913863
  • NDC分類 326.3
  • Cコード C3030

出版社内容情報

◇自然権としての「掛けがえのない個体」と、近代システムが創出した個体識別と登録による「個人の同一性」とはどのように異なるのか。個体の「司法的同一性」の技術は、国家が法の範囲内で個人に保護を与えるとともに、登録によって同定された個人を識別し、制御し、追跡し、告発し、拘束するための基礎である。

◇身体計測の人類学にはじまる同定・識別・登録の技術は、いかに近代国家システムの根幹を支える技術として生成し、指紋法からDNA鑑定法へと展開してきたか、その思想的系譜と技術の発見、技術の洗練・展開と制度化、世界への波及の歴史をはじめて精細に明らかにする画期的労作。

◇現在各国で急速に進められている個人識別票の電子カード化は、「司法的同一性」の世界的一元同定化の究極のすがたを示唆している。

◇鷲田清一(大阪大学教授)氏評「わたしが自身のあずかり知らぬ徴に引きずり戻らせるという忌々しさ」「二十世紀に他者の『聞き取りの技』へと転回することで、同一性へのこの強迫的な問いをほんとうに超えられたのか」「渡辺の問いは、最後にそこへ向かう」(朝日新聞 朝刊 2003-5-4)

【目次】
序 章 西欧における同一性の系譜
《第一部 人類学と行刑学のあいだ》
 第一章 ベルティヨンと司法的同一性の誕生①~不肖の息子
 第二章 ベルティヨンと司法的同一性の誕生②~公僕の務め
 第三章 ベルティヨンと司法的同一性の誕生③~地下室からの眺め
  断章一 「自己」という未知の世界~「免疫の意味論」から読み取れること
  断章二 布に織りこまれた精神と歴史~「衣服の精神分析」、「悪魔の布」、「マドラス物語」を読む
  断章三 いつまでも他者に触れることをあきらめないために~「考える皮膚」書評
  断章四 ド・クレランボー~布と熱情と死
《第二部 個体―市民社会の光学》
 第四章 近代システムへの〈インドからの道〉~あるいは「指紋」の発見
 第五章 顔を照らす光・顔に差す影~写真と同一性
 第六章 スフィンクスへの問い~コンプレックス以前のエディプス、エディプス以前の フロイト
 補章一 ポール・ブロカ『頭蓋学の手引き』~死を見失わせる実証主義の「死者の書」
《第三部 群集・兵士・原住民~市民社会の暗闇の斜面》
 第七章 帝国と人種~植民地支配のなかの人類学的知
 第八章 人種あるいは差異としての身体
 第九章 一九世紀末フランスにおける市民=兵士の同一性の変容
 補章二 人類学と徴兵制
  断章五 旅する狂気
《第四部 日本への刻印》
 第一〇章 戸籍・鑑札・旅券~明治初期の同一性の制度化と川路利良の「内国旅券規則」案
 第一一章 「個人識別法の新紀元」~日本における指紋法導入の文脈
 第一二章 指紋と国家~管理と差別の交差する場所
終 章 西欧的同一性は解体するか~技術とその限界


著者は1949年、東京生まれ。東京大学大学院博士課程修了。国立音楽大学助教授を経て、現在、立命館大学大学院先端綜合学術研究科長。専攻は文化人類学、人類学史、アフリカ研究。著書に『レヴィ=ストロース―構造』(講談社)、『アフリカンデザイン』(共著、里文出版)、『世紀転換期の国際秩序と国民文化の形成』(共編著、柏書房)など。訳書として、レヴィ=ストロース『やきもち焼きの土器つくり』(みすず書房)、デュモン『個人主義論考』、同『ホモ・ヒエラルキクス』(共訳、みすず書房)などがある。『レヴィ=ストロース―構造』はレヴィ=ストロース論として世界的な水準に達する労作といえよう。

内容説明

指紋やDNAなどによる「司法的同一性」の技術が識別し、追跡し、告発し、拘束する「個人」とは、「私さがしゲーム」におけるアイデンティティーや個人主義の「個人」と、どのように重なりどのように異なるのか。いま世界中で急速に進められている個人情報のデジタル化は、「司法的同一性」の究極の姿ではないか。個人のアイデンティティー幻想が、近代システムとしての市民管理技術と表裏一体の相補性をもつことを明らかにした問題提起の本。

目次

西欧における同一性の系譜
第1部 人類学と行刑学のあいだ(ベルティヨンと司法的同一性の誕生(不肖の息子;公僕の務め;地下室からの眺め))
第2部 個体―市民社会の光学(近代システムへの「インドからの道」―あるいは「指紋」の発見;顔を照らす光・顔に差す影―写真と同一性 ほか)
第3部 群集・兵士・原住民―市民社会の暗闇の斜面(帝国と人種―植民地支配のなかの人類学的知;人種あるいは差異としての身体 ほか)
第4部 日本への刻印(戸籍・鑑札・旅券―明治初期の同一性の制度化と川路利良の「内国旅券規則」案;「個人識別法の新紀元」―日本における指紋法導入の文脈 ほか)
西欧的同一性は解体するか―技術とその限界

著者等紹介

渡辺公三[ワタナベコウゾウ]
1949年、東京に生まれる。東京大学大学院博士課程修了。国立音楽大学助教授を経て、現在、立命館大学文学部教授。専攻は文化人類学、人類学史、アフリカ研究
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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Hisashi Tokunaga

0
2003年10月読了。もう一度読み返すか思案。2012/09/25

あだこ

0
フーコー理論の人類学的実践。人類学の面目躍如。2010/06/16

たろーたん

0
昔は、人を同一人物であると特定するのが難しく、再犯者の特定が出来なかった。名前や顔写真の記録はあるものの、名前は偽名や重複が多く、顔は年齢とともに変わるので、同一人物と判断するのは難しかった。そこで、人類学的な手法として身体測定が行われた。それは身長体重だけではなく、耳の長さや形、頭部の長さ等が測れた(成長しても変わらない部位)。測定された記録は検索しやすいデータベース化され、司法において対象人物を同一として判断することが可能となった。そして、その延長線上にあるのが、現在の指紋や網膜システム等である。2018/01/31

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