個人主義論考―近代イデオロギーについての人類学的展望

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  • サイズ B6判/ページ数 473,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784905913467
  • NDC分類 389
  • Cコード C1030

出版社内容情報

普遍の原理にみえる《個人》のイデオロギーが、いかに普遍ではなく、西欧近代の所産にすぎないのか。フランスやドイツは、どんな異なった個人観や逆説的全体論を内蔵させ、いかに《全体主義》を招いたのか。《両義的西欧》が抱える近代イデオロギーの矛盾を、人類学的展望をもって対象化しようと試みた壮大な問題作。

【主な目次】
第一部 近代イデオロギーについて[第1章 生成1:世俗外個人から世俗内個人へ/第2章 生成2:13世紀以降の政治的カテゴリーと国家/第3章 生成3::経済的カテゴリーの出現/第4章 民族的変奏Ⅰ:ヘルダーおよびフィフテにおける国民と民族/第5章 民族的変奏Ⅱ:エルンスト・トレルチによる自由のドイツ的理念/第6章 全体主義の病い:アドルフ・ヒットラーにおける個人主義と人種差別論] 
第二部 比較の原理―人類学的普遍性[第7章 マルセル・モース:生成しつつある科学/第8章 人類学者の共同体とイデオロギー/第9章 近代人および非近代人における価値]
解説 両義的西欧と「近代」への問い(渡辺公三)

ルイ・デュモンは1911年、パリの壁紙作りの職人の子として生まれる。大学での勉強を一端放棄したのち、「民間伝承工芸博物館」の助手として活動をはじめ、これをきっかけに人類学の父ともいえるマルセル・モースの最晩年の講義に加わり、人類学者としての修業と遍歴の時代をはじめた。第二次大戦に応召してドイツ軍の捕虜となるが、この時ハンブルクにいたドイツ人のインド古典学者からサンスクリットの手ほどきを受けた。戦後、南フランスの祭りの伝承を調査・研究して、1951年に『タラスク』を刊行、研究者としての地歩を固める。前後して、49-50年にかけて南インドの長期調査をおこない、51年、英国に渡り、オクスフォード大学講師となる。55年、レヴィ=ストロースとデュメジルの推薦によって、社会科学高等研究院(インド社会学、ついで比較社会学講座)の研究指導教授に就任。57年、学位論文『南インドの下位カースト、プラマライ・カラールの社会組織と宗教』、つづけて1967年には主著『ホモ・ヒエラルキクス(位階的人間)―カースト体系とその意味』(田中雅一/渡辺公三訳、みすず書房)となって結実。ヒエラルキー原理によって構成されるインド社会の理解は、西洋社会が育ててきた個人主義の原理との対比を否応なく意識することとなり、インド社会の調査を踏まえた西欧社会の人類学的理解をデュモンに導くこととなった。『ホモ・エクアリス(平等的人間)Ⅰ:経済カテゴリーの生成と開花』(1977年)が刊行され、それらの上に立って叙述されたのが本書であり、デュモンの思考の集大成ともいえるものである。1991年、『ホモ・エクアリスⅡ:ドイツ・イデオロギー』を刊行、1998年死去。邦訳には他に『社会人類学の二つの理論』(渡辺公三訳/弘文堂)、『インド文明とわれわれ』(竹内信夫・小倉泰訳、みすず書房)がある。

「著者は、全体主義は個人主義が根を下ろし支配的である社会で、それを全体としての社会のもとに従属させようとする試みから生まれる、と述べている。…ヒトラーの闘いは、個人主義に対する全体論のそれであった。彼はドイツ的全体論から派生した汎ゲルマン主義者であり、この汎ゲルマン主義はアーリア人種に限定された。アーリア人は自己犠牲をいとわぬ理想主義者であり、その対極の理念に指定されたユダヤ人種は、必然的に個人主義者であった。だがヒトラーの反ユダヤ主義闘争の核には、個人主義思想が隠されていたのである。その個人主義思想とは、…強いものが生き残るという悪しきダーウィニズムであり、徹底した他者不信という形での個人主義である。まるで優れた推理小説を読み終えたような、読後の印象である。」(芹沢俊介/中日新聞 1994.2.10)

「民衆制のただなかから独裁制が登場してくるのと同じように、個人主義は全体主義を産み落とす、少なくともそうでありうる、というイデオロギーの劇的な転換について戦後日本人は無知である。…本書は、そのかなりに難解なもしくは錯綜せる論旨を根気よく読みほぐしてみれば、戦後日本における『自由と民主』が虚妄に陥っていたことを自省するのにも資するであろう。」(西部邁/産経新聞 1994.1.23)
「(デュモンの指摘は)現在でもなおきわめて挑戦的なものである。明治以降、ドイツ観念論の圧倒的な支配のもとにおいて、日本における『個人』概念が、ドイツ的偏向のなかにあることを思えば、デュモンの指摘は、日本人たるわれわれにとっても極めて重要な指摘である」(桜井哲夫/週刊読書人 1994.2.4号)

内容説明

普遍の原理にみる〈個人〉のイデオロギーが、いかに普遍でなく、西欧近代の所産にすぎないのか。フランスやドイツは、どんな異なった個人観や逆説的全体論を内蔵させ、いかに近代は〈全体主義〉を招いたのか。〈両義的西欧〉が抱える近代イデオロギーの矛盾を、人類学的展望をもって対象化しようと試みた壮大な問題作。

目次

第1部 近代イデオロギーについて(生成;民族的変奏;全体主義の病い)
第2部 比較の原理―人類学的普遍性(マルセル・モース―生成しつつある科学;人類学者の共同体とイデオロギー;近代人および非近代人における価値)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あだこ

0
正直、二部は難しかった。人類学の歴史的文脈に熟知していないと。一部はとてもわかり易い、系譜学的なお話。全体論から個人主義が分離して、それが全体論を包含しつつ、近代的な経済とか政治とかのカテゴリーをどう作り出していったかという話。2009/07/16

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