内容説明
ソウルの街角で野良猫の世話をするファヨル、二十歳。父は彼女が五歳の時に失踪、数年後には母も単身、渡米してしまった。そんなファヨルを気遣う親戚もいるけれど、コンビニでアルバイトをして一人暮らしをしながら、野良猫と、猫を通して知り合った人たち、ボーイフレンドに支えられて生きている。みんな、自分らしい生き方をしたいと模索している。高校を中退したファヨルにも、大学へ行くより、やりたいことがあった…。詩人によるかろやかで心に響く長編小説。
著者等紹介
黄仁淑[ファンインスク]
1958年、ソウル生まれ。ソウル芸術大学文芸創作科卒。1984年京郷新聞新春文芸に詩「私は猫に生まれたい」が当選し、詩壇デビュー。1999年に東西文学賞、2004年に金洙暎文学賞を受賞。実体験をもとにした『野良猫姫』は初の小説
生田美保[イクタミホ]
1977年、栃木県生まれ。東京女子大学現代文化学部卒。韓国ソウルの法律事務所で社内翻訳者として勤務する傍ら、韓国放送通信大学にて韓国文学の研究を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
34
作者の体験が投影されているそうなのでほぼファヨル=作者と想定して読む。小説というよりファヨルが書いたエッセイを同時進行で読んでいる感じ。アメリカドラマだと娘を置いて出て行って生き生きしてる母についてもう少しからっとしているけどさすがに韓国の反応は日本に近い。2018/05/02
かもめ通信
17
19歳のファヨルはソウルの片隅でコンビニバイトで生計を立てながら一人暮らしをしている。バイトからの行き帰り、野良猫たちに餌をやるのが日課だ。元気いっぱいの日もあれば、どんより落ち込んむ日もあるつれづれ日記風な文体の中に、ファヨルと猫と、社会の中で忘れられがちな、でも確かに存在して、誰かが気に掛けてくれることによって生きながらえているような人々や猫たちの暮らしぶりが浮かび上がる。一気に読むというよりは、毎日少しずつ、ファヨルと一緒に坂道を上って、猫たちに会いに行くような気持ちで読むのがお勧めだ。2022/10/20
niaruni
5
小説のなかにはあらすじを伝えることの難しいものがある。というか、あらすじを伝えたところで意味がない、というか…。これもそんな作品のひとつ。若い女性と野良猫と彼女のまわりの人たちの日常が、淡々と、余計な感傷はほとんどなく描かれているだけ。でも、だから(?)心地よい。それがどこから出てくる心地よさなのか…それが知りたくて、すぐにまた読み返してしまう。宝物のような一冊。2014/11/28
🍣
4
2・22におすすめされていた本。温かさが小刻みに注入される感じがして、どの章を読んでも満たされる。“一気に読まず寝る前に少しずつ読むのもいいかもしれません”という言葉の通り、笑うネコのお隣さんのメンバー、ピルヨン、家族、ネコたちを軸に、生きることの豊かさ、切なさ、後から迫ってくるひりひりした哀しさを表す控えめな描写が大好きで、終わらないでほしいと思った。ただ、小説としては散らかっているし、周囲の人々が優しすぎて現実味がない。詩人だからか時折、詩を入れているけどない方が良かったかも。ベティが可愛い。2022/03/13
桧山
3
このレーベルは表紙可愛いの多くて好き、遊び紙も可愛かった。韓国文学ってものに興味を持ったので読んでみた。読みやすく、話は何も起こらない日常なんだけれど結構好きな部類、だったので書き込みをもっとして欲しかった。かなりアッサリなので物足りない。 時差もないほど近い国ですが、考え方とか気候とかはだいぶ違うなと。日本には徴兵制ないしな。 小説の場合責任を果たさない母親が好きなのでこの本の母親ももっと登場して欲しかった。けれど私小説に近いようなので複雑。2018/06/17