内容説明
自然に融けこむ精霊や樹木崇拝の信仰など、民族文化の多様な姿を通して、東洋的世界における人間の営為を捉え直し、人間の存在そのものを問いつめ、そこから人生の奥深い意味を汲み取ろうとする。第16回南方熊楠賞受賞決定。
目次
第1部 アニミズムの風景
第2部 カミの所在
第3部 宇宙図の東と西
第4部 コスモスの構造
第5部 飛鳥は飛空
第6部 人間の一生―風にそよぐ梢のような
著者等紹介
岩田慶治[イワタケイジ]
1922年、神奈川県横浜に生まれる。京都大学文学史学科卒業。同大学大学院文学研究科修了。タイ、ラオス、カンボジア、マレーシア、インドネシア、フィリピン、スリランカの各地域で調査・研究に従事。大阪市立大学教授、東京工業大学教授、国立民族学博物館教授、大谷大学教授を経て、国立民族学博物館名誉教授・東京工業大学名誉教授。『木が人になり、人が木になる。―アニミズムと今日』で第16回南方熊楠賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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テツ
16
古今東西数多の人々が森羅万象に人格を見出し神の姿を幻視してきた。人は時代を経て先人の積み重ねてきたモノの上に自分の力と知恵を更に積み重ね続け霊長類として世界の真の姿が見えるようになり、世界を動かす力のいくつかを利用できるようになり、人という種族の生き延びる確率は格段に増した。凡人でも快適に幸福に生きることができる世界は素晴らしい。でもそれと引き換えに気がつけば世界には人しかいなくなってしまった。種としての繁栄と幸福と引き換えに孤独になってしまった。仕方のないことだけれど、寂しいよな。2021/11/01
内島菫
15
巻末に配された二つの付論に、著者の忌憚ない意見がさらりと述べられていて興味深い。地理学者フンボルトが、自分が一生をかけた仕事を結局は書物の索引でしかなかったと言ったことに対して、著者がよくぞいったと述べていることに対して、私もよくぞいってくださった、と思った。フンボルトも岩田慶治も世界の根っこをしっかりおさえていることがよくわかる。そのおさえ方は、岩田がいうように「民族学者が質問をする、話を聞くというのはじつは問題なんだ。聞かないでわからないとだめなんじゃないか」というわかり方だろう。2023/07/07
らんぼ
3
さまざまな民族に無数の神話、信仰がある。我々の科学でこれらを評価してはいけない、と耳にタコができるほど言われている。自然保護、多様性が叫ばれている。どんな理屈がついても、どこか物足りなさを感じる。本当に"わかった"わけではない。 一つの信仰は、初めから終わりまで生活の流れの中にある。風景に溶け込まずして理解することはできない。理解という言葉も正しくない、端的にそう"見える"のだ。 因果を超えた見方。矢は、放つ前から的に刺さっていることもある。2021/08/01
保山ひャン
0
岩田慶治83歳のときの本で、次のステップの新しいことの前に、過去の考えの整理をするために編まれた本。これは『コスモス』のフンボルトが、生涯の最後に、「自分がやってきたことは書物の索引でしかなかった」と嘆息した岩田慶治お気に入りのエピソードにもつながるものだろう。1.アニミズムの風景、2.カミの所在、3.宇宙図の東と西、4.コスモスの構造、5.飛鳥は飛空(道元)、6.人間の一生、付論1.ふしぎの場所、同時空間のフィールドワーク、付論2.存在の深みへ。 全学問を風景画に封じ込めて、一目瞭然、の発想はすごい!2015/07/24
ouosou
0
人生という形のないものを造形する方法として「つみあげる」または「けずる」ということを考える。2015/06/08