内容説明
だれかが夢の栓を抜かなければ、この国は沈んでしまうかもしれない神がふたたび眠りにつくまで。ひとりの日本兵が残した謎の神ブラナをめぐり、現代と戦争の記憶が交錯し―待望の長篇小説。
著者等紹介
青来有一[セイライユウイチ]
1958年、長崎県長崎市うまれ。長崎大学教育学部卒業。1995年「ジェロニモの十字架」(『聖水』所収)で文學界新人賞を受賞。2001年「聖水」で芥川賞受賞、2007年『爆心』で伊藤整文学賞と谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
尾白
2
――― そろそろ誰かがこの国の夢の栓を抜かなければ、この国は沈んでしまうかもしれない――― それぞれの章でそれぞれの神や信仰を手探りでなぞる感じ。堅苦しさはなく、思いのほか読みやすく、読み終えてしまうのが残念だった。2015/06/29
Nobuyuki Araki
1
「ねるよりらくはなかりけり」人間ドラマに浮かび上がる夢・信仰の神秘な世界を丁寧に描く秀作。新作が楽しみな数少ない国内の好きな作家です。2013/02/12
かんちゃん
1
生まれては捨てられ忘れられていく古い神々と、新しく生まれ続ける新しい神々は、衝突しながら、たまに歩み寄りながら、さらに次の神々へと、人々を委ねていく。物語は南へ、そして上から下へと向かう。栓の抜けたバスタブから水が落ちていくように、夢と一緒に言葉が落ちていく。夢の中で人は、誰かの言葉に、じっと耳を傾ける。互いにほとんど関係がない短編が、しっかり一つの長編になっている面白い本。信仰や過去を信じる人と疑いながらも捨てきることも出来ない人の、そんな微妙な対比の巧みさに惹かれた。2013/01/13
たく
0
読ませる。読むことで読み手に色々考えさせる。哀しい人もいるんだけど、それはこっちの考え方であって、本当は多分幸せなのだろう。睡眠不足。2014/08/09
stafy77
0
不思議な読後感。信仰や夢を見ることとそれを取り巻く人々のドラマ。章ごとに読み切りで読めるけれど、全体を通して大きなテーマが見えてくる。個人的には南国への憧れの風景のようなものを強く感じた。2013/10/01