バートルビー―偶然性について

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  • サイズ B6判/ページ数 205p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784901477185
  • NDC分類 104
  • Cコード C0010

内容説明

「する」ことも「しない」こともできる潜勢力とは何か。西洋哲学史におけるその概念的系譜に分け入り、メルヴィルの小説「バートルビー」(1853年)に忽然と現れた奇妙な主人公を、潜勢力によるあらゆる可能性の「全的回復者」として読み解く。小説の新訳を附す。

目次

バートルビー―偶然性について(ジョルジョ・アガンベン)
バートルビー(ハーマン・メルヴィル)
バートルビーの謎(高桑和巳)

著者等紹介

アガンベン,ジョルジョ[アガンベン,ジョルジョ][Agamben,Giorgio]
1942年ローマ生まれ。2003年11月よりヴェネツィア建築大学(IUAV)美学教授

高桑和巳[タカクワカズミ]
1972年生まれ。慶応義塾大学理工学部専任講師
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

30
國分功一郎『中動態の世界』にメルヴィル『ビリー・バッド』を分析した最終章があります。これは、本書における『バートルビー』の分析を意識したものになっています。ここで國分はそれまで論じてきた中動態の哲学を作品分析に展開させるとともに、アガンベンが『バートルビー』から読み取った潜勢力を批判しています。國分は、『ビリー・バッド』を能動と受動の対立ではなく、能動態と中動態のパースペクティヴにより構図自体をつくり替える試みとして読み替えました。この構図を借りるとするならば、潜勢力は受動態を能動的に把握することを試みた2018/09/16

白義

18
小説を読んでいる間ずっと笑いっぱなしだった。底知れず不気味でありながら、具体的日常感に肉薄したリアリティーがあって、実際近くにいたら絶対嫌なのに、痛快なものを感じる。まことにこのバートルビーという人物は文学史において一二を争うほど魅力的だ。全ての命令、語りかけ、誘いを「しないほうがいいのですが」の一言で全て拒み、事実なにもしないにも関わらず周りの精神にじわじわ食い込み存在感を残す、怠惰者とすら言えない怠惰者、無能者を超えた絶対的無実行者。彼はただ拒むだけで、世界の蝶番を外してしまう2013/03/02

大ふへん者

5
初期~中期ウィトゲンシュタイン的なナンセンス諸類型が、「潜勢力」をキーに様々の形而上概念と交差する。あれこれ引き合いに論じられているが、個人的にはヘーゲル=アドルノ的な弁証法との親近性が感じられた。細かく対立項を配置し、オルタナティブの過程で対立が意味を持たなくなるような地点を引き出す。アリストテレス、ドンス=スコトゥス、ライプニッツを読んでいればかなり理解しやすい。あとはどう私なりのアクチュアルな問題へ還元するか考えよう。2014/01/25

なめこ

3
「バートルビー」本編がアガンベンの論考と訳者の論考の間に挟まれて付されてあるのは良かったが、なかなか手強い内容だった。イスラム系の宿命論者はもちろんアリストテレスもライプニッツも引用される哲学者たちの著作を読みえていないというのが大きな敗因のひとつではあったかもしれないけれど、「しないほうがいいのですが」というバートルビーの決まり文句が、することとしないこと双方の可能性に留まり続けるための戦略であるというのは、かなり興味をそそられる指摘だった。あとはもう少し訳注があればね。2015/10/20

ノーマン・ノーバディ

2
こういう、海外の文学作品とそれを論じた論文の翻訳をセットにするスタイルって面白いな。どうしても訳や注の充実度が文学と論文のどちらかに偏ってしまうとか、文学作品の解釈が論文に引っ張られてしまうとか、色々限界はあるだろうけど、入門シリーズ的なノリでこういうものがあったら面白いかもって想像してしまった。2019/03/04

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