内容説明
殺して、何が悪りんじゃ。物語の焔を浴び、物語を焼き尽す、近代小説の到達点。不滅の代表作。最新詳細年譜付。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
minoru
2
紀州サーガ2作目。秋幸の黙々と肉体労働で働く感じがやっぱり印象的だが、即物的だとも思う。血縁が複雑で濃いため閉塞的だ。個人的には盆踊りの場面の“きょうだい心中”が話される場面で鬱屈となった。父への忌避や兄の死が執拗に繰りかえされていた。2024/03/30
Yanqiu
1
象徴的に幾度も登場する夏芙蓉とその香気、執拗に繰り返される秋幸の生い立ち、西村の者、竹原の者、また浜村の者、そしてこの独特の文体……あらゆる要素が「紀州サーガ」を織り成していて圧巻です。土方仕事のときにあらゆる呪縛からの解放を覚える秋幸、秀雄を殺すとき郁男に殺される自分を重ねる秋幸が印象的でした。ラストシーンで徹が「白痴の子」を再び誘うシーンがかなり奇怪だったのですが、彼らの周りを意識して読み直したい本。2018/01/05
Ryosuke Tanaka
1
"博打で土地が飛んでいた頃の話"を聞く機会があって手にとった。『軽蔑』がわからなかったのに比べすっと入った。骨組みはヨクナパトーファ・サーガまんまだが(ドストエフスキーを軽蔑しながら書いたとあるように)筋肉質な文体と口承っぽい語りがすごい密度で結実している感じがした。これが77年で『なんクリ』が80年ということを思い都市と周縁の異時性を強く感じた。2016/03/06