出版社内容情報
刊行時から話題を呼んだ、秋幸三部作の掉尾を飾る超大作。路地跡に立つ秋幸を待ち受ける意外な運命……、小説的創造力を駆使して描く路地の終焉は、同時に過去の作品への作家自身による決別でもあった。中上健次全作品中の最高作であり、三部作の完成形であると同時に、後期への展開を孕んだ分水嶺をなす作品。また原発問題、土地再開発など、最も今日的な問題をも先取りした、いまも色褪せないアクチュアルな内容である。
作家自身の関連エッセイ、いとうせいこうの書き下ろし解説30枚、解題等収載。片観音二色口絵に著者写真他重要資料掲載。月報44頁付き。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
minoru
2
紀州サーガ、秋幸もの3作目。「路地」世界の解体が描かれる。再開発にともなう、秋幸から繁蔵たちに対する疑念も印象的。成り上がりの実父、“蠅の王”浜村龍造に対する屈折した心情、また“水の信心”によるサブトピックも妖しげだ。素行不良な人物たちで実感がわかなかったけれど、視点が入れ違うテクストは非常に濃い世界だった。2024/04/14
Yanqiu
1
読んでも読んでも進んでいる感じがしなかったが、突然終わりました。ヨシ兄が撃たれてからのすさまじい展開のはやさについていくのに精一杯で、まだこれを十分に噛み砕いて吸収するためには、自分は未成熟であったと思いましたが、その状態でこの空気を吸えたことはとても貴重な体験だったとも感じます。今回は文章のリズム、そして秋幸の住む世界の雰囲気を味わうためにざっと読み通したので、いつか『鳳仙花』からこの紀州サーガを再びつぶさに読み返したい。2018/03/25