内容説明
不平等の拡大を条件の平等にすり替え、社会問題を脱政治化する新たな支配のイデオロギーを撃ち、資本=国家に抗する政治を露出させるランシエール政治哲学のアクチュアルな展開。
目次
勝利した民主主義から犯罪的な民主主義へ
政治あるいは失われた牧人
民主制、共和制、代表制
憎悪の理由
講演 デモクラシー、不合意、コミュニケーション
訳者解説 デモクラシーとは何か
著者等紹介
ランシエール,ジャック[ランシエール,ジャック][Ranci`ere,Jacques]
1940年アルジェ生まれ。パリ第8大学名誉教授。哲学、美学
松葉祥一[マツバショウイチ]
1955年生まれ。現在、神戸市看護大学教授。哲学、倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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20
ラカニアン的に述べるなら、「政治的関係は存在しない」。言い換えると、統治の「正常な」関係は存在せず、統治はつねに他の関係への隠喩的依拠にもとづくものである。男性と女性、父と子、牧者と群れ、神と被造物、等々。こうした隠喩系は歴史的に形成されてきたもの―従って偶然的なもの―だが、この偶然性が理解される可能性は、近代になってはじめてもたらされた。近代民主主義の理念は、それと同時に、その原理―統治者と被統治者の同一性―を通して矛盾を孕むことになる。というのも、民主主義が実際に機能するのは、「世論」が統治者と被統…2018/07/03
テツ
18
誰しもが昨今抱いている民主主義の行き詰まり感。衆愚(勿論僕自身も含めつつ)がそれぞれてんでばらばらに勝手に浅薄な知識で語る理想の世界の胡散臭さ。ホモサピエンスに民主主義はきっと難しすぎる統治形態なんだろうなということはうっすらと感じていたけれど、そうした疑問に全て何らかの解答を与えて貰った気がします。民主主義とそれを是とする政治の進め方。個の自由を尊ぶ先にある世界と社会の在り方。バランスを取るのは本当に難しい。2018/06/09
hitotoseno
10
先般教師に対して暴行を働いた生徒の様子を映し出した動画がネットに公開され、人々はモラルハザードもここまで極まったか、と慨嘆するばかりだった。一体どうしてしまったんだこの国は、昔は年長者の言うことは絶対だと教えられ、上の者には敬意を払うことが当たり前だとされていた、いつからこうなったんだ、これも戦後民主主義の病というやつか……と言った者がいたかどうかは知らないが、ランシエールならきっとそうだ、と毅然として応えるだろう。同時に、それを受け入れられないなら民主主義を奉じることは不可能だ、とさえいうかもしれない。2017/11/13
Saiid al-Halawi
8
クジ引きこそが本当の民主主義で、デモクラシーとは本来政治的アクターとみなされ得ない、声を上げるはずの無い人々から声が上がることだっていう説明にめちゃ得心した。 「民主主義は、いかなるモノの本性にも基礎づけられず、いかなる制度的形式によってももたらされず、いかなる歴史的必然ももたらさない。民主主義は、それ自身の活動の不変性にのみ依存する。」p.1302014/12/29
富士獣
5
「(クラシカルな)民主主義の行き過ぎ」(現代は個人が権利を主張し平等になりすぎていて、古き良き家父長制的な良さが失われている)言説の類の''民主主義への憎悪''に対し「そもそもデモクラシーとはそういうものだ」と主張している、というのが素人的な理解。 古代ギリシャから現代に至るまでの知見に基づき専門的な議論を重ねていて、和訳までされてる(論文でなく)書籍とはいえ門外漢が読むような本ではなかった気がする。解説は割と易しい。2018/12/08