内容説明
本書では、人間とはどんな特殊な生物であり、その特殊性がどのような条件のもとで出現してきたのかを、いわゆるオーソドックスな人類学の見方とは、少し異なる視点から論じている。
目次
第1部 ヒトという不思議な生物(ヒトは他の生物と何が異なるのか;生活史戦略とおばあさんの進化;ヒトには「おばあさん」が存在する;認知的贅沢)
第2部 「脳」がヒトをつくった(現生人類はいかに人間圏をつくったか;アウト・オブ・アフリカ;そしてわれわれはどこへ行くのか)
第3部 進化、言葉、ヒトゲノム(人類はどのように歩んできたのか;小鳥の音声コミュニケーションと人間言語;ヒトゲノムと類人猿ゲノムの比較から人間の独自性を探る)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みかん山のみかん
11
『この脳が何のために生まれてきたかというと、人間圏をつくって生きるような共同幻想の世界をつくり出し、この宇宙や、そこに地球や生命が存在する、そのことを認識するという以外に、僕は究極的には答えはないんじゃないかと思っているんですがね。』2013/12/01
那由田 忠
5
内田亮子の人類進化の説明は最新のようで、300万年前にアフリカに6種の人類がいたそうだ。長谷川の性淘汰で脳が進化したという説は、他のいろいろなヒトの特殊性が見てもっともらしいと思った。子供を産めなくなっても長生きするのはヒトだけだとは面白い、確かにね。 岡ノ谷が「赤ちゃんがなぜ大きな声で泣けるのか」というのが重要と疑問を呈したのに、なるほどと感じた。これは襲われる立場の動物にはできない特殊性であるのは間違いがない。 最後に類人猿ゲノム研究への期待が書かれていたが、その後裏切られたのだろう。残念だ。2014/10/06
g830165
1
『あ、でもね、人間に育てられて言語を教えられたチンパンジーは、写真を分類するときに、アイゼンハワー大統領の写真は「人間」というところに入れて、自分と同じチンパンジーは「チンパンジー」というところに入れたのだけれど、自分の写真だけは「人間」のほうに入れたんだって(笑)。そういう逸話もありますけど。』2013/02/11
茶幸才斎
1
脳がでかい、繁殖終了後の寿命が長い、火を使う、言葉を用いるなど、ヒトが他の動物の延長線上にあるとは思えないくらい、えらく異質な存在に見える、という感想に行き着く本。その異質さに、もっともらしく進化生物学的な仮説は立ててあるが、なんだか眉唾臭いので、余計にそう思ってしまう。異質であること、それ故にヒトは地球生態系の頂点に立ったのだろうが、その同じ異質さが、ヒトを生物界から一人突出させ、全体との折り合いを失わしめている。ちなみに、「我々現代人はピルトダウン人の子孫に違いない」というのが、私の信じる説である。2011/06/25
でろり~ん
0
初版は2002年ですから14年前。こういう本との出会いは早い方が楽しめるでしょうね。おばあさん仮説がとても興味深かった。なるほど、生殖可能な時期を過ぎて生きているのはヒトぐらいなものなんですね。日本ではおばあさんの知恵袋とかいう言葉があるし、おばあさんの重要性って何となく気が付いていた民族なのかもねえ、と思いました。グローバル化に対する警戒は、現時点でどう変化しているのでしょう。例えば、訝し気に捉えられているあの大統領になる人は、世界の脳変化を正常に戻す方に引鉄を引くことになったりするのでしょうか。2016/12/11