出版社内容情報
クライン教授(スタンフォード大学)は、イノベーションは市場発見から始まるとする「連鎖モデル」を提唱し、リニアモデルを否定した。サイエンスにより生まれる技術知識(テクノストック)をイノベーションのプロセスで活用するニーズ主導のモデルであり、大きな社会的インパクトを与えた。
●知の戦略的な活用
経営資源としての情報の重要性は、すでに70年代に主張され、その流通はITの高度化と普及によって飛躍的に進展した。しかし、やがて企業は膨大な情報のフローが、かえって業務効率の低下につながるという「情報化のパラドックス」に気付くことになる。差し迫った経営課題は、情報のフローではなく、そのストックとしての知識を、いかに戦略的に活用するかである。
企業やコミュニティーの活動の本質は、知識の創造、活用、蓄積からなるダイナミックなプロセスである。しかし、この本質は、われわれの目には見えないことがある。知識は、科学の公式や製品の仕様書のように書かれたものとしての形をとるばかりではなく、言葉にはできない技能やものの見方、あるいは慣習の中にも埋め込まれているからである。
知識科学は、そのような知識の重層的な構造を解明するとともに、書かれざる知識に形を与え、組織的に共有できるモデルを作り、さらには新しい知識を創造するメカニズムの構築を目指す。それは、見えない本質に光を当て、企業やコミュニティーに未来を切り拓くための変革の視座に立つことに他ならない。
内容説明
本書は、“Kline Model”で知られるクライン教授のイノベーション(技術革新)理論をあますところなく紹介するとともに、それに基づいた日米の「社会技術システム」の変革の相違を詳細に検討している。
目次
基本コンセプトの再構築(テクノロジーとは何か;基本パターン;テクノロジーが包含されているシステム;イノベーション・コンセプト;イノベーションモデル;産業主義の社会技術システム;経済大国としての日本の登場;日米の成功の比較)
我等、今、何をなすべきか(日本式生産方式に追い付こう;より適切なR&D優先順位付けが必要;基本コンセプトの理解を深めよう;長期的展望を持とう;研究組合を利用しよう;政府は技術政策を確立せよ)
あとがき エンジニアリング社会のために