内容説明
忍び寄る戦争の足音、大人たちのふるまいと隠された真実、空襲、敗戦、そして飢え。戦後の映画界になくてはならなかったひとりの女が、東京‐パリを舞台に克明に描く、その喜びと悲しみ、そして決心。胸を揺さぶる、ドラマチックな自伝的小説。
著者等紹介
秦早穂子[ハタサホコ]
1931年7月31日、東京・渋谷生まれ。洋画配給会社「新外映」の企画課長。ルネ・クレマン『太陽がいっぱい』、ロジェ・ヴァディム『危険な関係』、ゴダール『女は女である』など、数々の名作を日本に輸入した。カンヌ国際映画祭に2003年まで通い、ジャーナリストとして外国映画の紹介に努め、現在も朝日新聞の映画評のメンバーである。同時に、シャネル、マダム・グレなど、ファッションも紹介しながら、新聞、雑誌などで執筆活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タイコウチ
9
フランス映画「アネット」を観た流れで、50年代後半から60年代のヌーヴェル・ヴァーグの時代にパリで映画の買い付けをしていた女性の回想録を読んでみた。戦中・戦後の子ども時代は「舟子」という仮名で3人称の小説仕立て、パリに渡った20代は「私」による語りで、両者が交互に展開するという少し変わった構成。ゴダールの「勝手にしやがれ」を完成前に買い付けたという(邦題も彼女がつけた)。ゴシップ的内容も多いが、子ども時代を含め「怒り」を秘めた意志の人という印象が残る。個人的にはジャック・タチのエピソードなど興味深かった。2022/05/31
団塊シニア
7
主人公萩秋子は満州事変の年に渋谷で生まれた。筆者の自伝的小説で映画評論家でヌーベルヴァーグを日本に紹介した人物である。2012/05/20
グラコロ
3
戦後まもないパリで女ひとりしっかり仕事をする。カッコ良すぎる~。しびれる~。グラコロ堂〈人生で影響を受けた100冊〉 https://bookmeter.com/users/626279/bookcases/11552173 2013/05/17
ひとみ
2
映画のバイヤーとしてヌーベルバーグを日本に紹介した著者による自伝的小説。家族や少女〜現在の間に知り合った人々について語る「舟子」と、目的もよくわからないままいたパリで新しい才能が出現する様子を見ていたより回想記的な色の強い「私」とのパートが交互に配置され、最終章で纏まる構成が面白い。影の部分とは、歴史や人生のある局面決して表立っては語られない部分の色の濃さを指すのだろうか。小説としても文化史の記録としても読み応えのある本だった。2012/12/07
Takehiko Hosoda
1
50年代から60年代にかけてフランス映画を日本で配給する影の部分はこんな人がいた。戦後間もない時期、映画の買い付けが職業としては世間体は冷たいでしょう。ゴダールのデビュー作が日本でこれだけ指示を得ているのは筆者による邦題の力が大きいと思います。2013/03/31