内容説明
生の実感もなく、死の実感もない人生の断片化と瞬間化が進行するなかで、倫理の根本は揺らぎ、崩れはじめている。突きつけられてくる問いに具体的な回答を提示しつつ、個と公共性をつなぐ新たな回路の創出をめざす画期的試み。
目次
序章 薄れゆく生死の実感―日本社会の倫理の転換期
第1章 「脳死」を人の死だと考えますか?―死と生の意味
第2章 なぜ人を殺してはいけないのか?―生命尊重の根拠
第3章 自分の命や身体をどうしようと勝手か?―自殺と臓器交換
第4章 子殺しも親としての責任の取り方か?―虐待と親子心中
第5章 胎児の命を選ぶのはいけないことか?―人工妊娠中絶
第6章 患者の命は誰のものか?―輸血拒否と安楽死
第7章 動物の命は人類のためにあるのか?―商業利用と医学実験
第8章 国家による人殺しは正しいか?―死刑と戦争・虐殺
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒナコ
7
脳死・殺人・自殺・臓器移植・虐待や無理心中・出生前診断と人工妊娠中絶・安楽死と輸血拒否・死刑と戦争、以上のような生命倫理に関する雑多な問題を扱った研究書。 本書の特徴としては、自己決定至上主義のアメリカ流の生命倫理学ではなく、判断の「公共性」を重視するコミュニタリアン的な生命倫理学が提唱されていることだろう。 つまり、著者は本書において、自殺や中絶や安楽死の判断における基準は、「現在生きる共同体の住人と、将来共同体にやってくるだろう人々に、「顔向け」できる判断であるか否か?」であるべきだと述べている。→2022/05/03
PayPay
1
命をどのように扱ってよいかということに関して広く書いてあると思った。 自殺にしても 命は誰のものか→誰のものでもない。死ねば悲しむ人がいる、社会への影響もある 人を殺してはいけない理由→自分の子どもや次の世代に語れない、つまり「ふるまい方」の意味での公共文化に相応しくない 隠せばいいし、公共文化の形成に貢献しなければいない理由が分からないので根拠としては弱いと思った。2024/04/22