内容説明
これは、けっして特殊な事件ではない。どこの保育所でも起こりうる「人災」である。小さな嘘、怠慢、思いこみとすれ違い…日々のひずみの積み重ねが、必然的に子どもの命を奪うことがあるかもしれないことに気付いてほしい。命の重みを背負った保育の質を問う、著者渾身のルポ。
目次
第1章 事件の顛末(事件当日;事件の発覚)
第2章 事件に至る経緯(侑人君の誕生まで;家庭保育室に入る ほか)
第3章 事件への対応(当日の対応;上尾市としての対応)
第4章 上尾保育所で起きていたこと(「手のかかるクラス」;担任のなり手がない ほか)
第5章 上尾保育所だけの問題ではない(認可保育所で子どもを亡くすということ;「上尾保育所」だけなのか? ほか)
著者等紹介
猪熊弘子[イノクマヒロコ]
ジャーナリスト・翻訳家。朝日新聞出版『AERA with Baby』編集統括。東京都市大学人間科学部客員准教授。子ども・家族・女性・保育・教育などをテーマに、執筆、翻訳、編集のほか、テレビ・ラジオのコメンテーターや講演も行なう(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鈴
53
認可保育園で4歳男の子が事故死。侑人くんのご両親と保育士がやりとりした連絡帳の内容を読むと悔しくてたまらなくなる。私自身、保育士が忙しいだろうと思うと、どんなに心配でも連絡帳の文面を短くしたりと気を遣う。侑人くんのご両親も言葉遣いに配慮していたことが伺え、もしももっと図々しかったら違っていたんだろうか?侑人くんのご両親の言葉「事故を再び起こさないために、うちの侑人は亡くなったわけじゃない」で、取り返しのつかない事実にハッとする。保育園がこの先どんなに頑張っても、侑人くんはかえってこないのだから。2018/04/12
らむり
36
殺人保育所と言ってもいいのではないだろうか。民間の会社とかならフツーにやってることができていない、破綻した公立認可保育所。モンスターペアレントくらい想定の範囲内だろう。やっと授かった一人息子を亡くしたご両親の無念さは余りある。2013/12/19
スノーマン
29
息子を一歳半から六歳まで預けたが、保育園なくては働けなかった。ハプニングでお迎えが遅れる時も『気をつけて来てください』と言ってくれたり、下の子が帰り際転倒し怪我した時も、受診の際は時間外なのに息子を見てくれたりお世話になりっぱなしだった。でもこの本に出てくる保育園は、立場の弱いもの、成長がゆっくりな子供に対して余りにも酷い。必死の両親の訴えに対し誤魔化すような連絡帳の返事には怒りがこみ上げる。亡くなった侑人くんが不憫でならない。読んでいて、この時点で防げた、救えたのに、と何度も苦しくなった2014/07/23
さなごん
20
娘と年が近いんだよな。保育所の状況に言葉が出ない。三人を保育園に預けてきたが、ここまでは?いやでもネガティブな見方しかしてくれなかった先生もいたな。ご両親のことを思うと辛い2015/08/27
コーヒー牛乳
13
何か一つ違っていれば防げたかもしれない。しかし、一つ違ったところで別の形で事故が起こっていただろうとも思う。それくらいさまざまな要因が重なり合い、重大事故が起こる下地ができあがっていた。人員体制、オペレーション、子どものタイプ、子ども同士の関係、保護者のタイプと保育者との関係、リスクに対する感度と対応などのいろんな穴が、一番弱い存在である子供を襲う。亡くなった男の子とご家族の心中を思うと胸が張り裂けそうだ。子供を取り巻く人的、物的環境をもっともっと大事にしてほしい。2023/11/18