内容説明
戦前日本の支配体制の中核とされ、敗戦時のその解体が「戦後」到来の象徴として描かれてきた「内務省」。一八七三年の設置から一九四七年占領下における解体まで、七四年間にわたって、近代日本の行政の中枢に君臨した内務省とは、何だったのか。関係者が残した資料を渉猟し、内務省の権能のメカニズムと、その盛衰のプロセスに初めて内在的に迫った気鋭の政治学者による野心作。
目次
序章 内務省と人治型集権制
第1章 内務省と政党政治
第2章 挙国一致内閣期の内務省
第3章 「新官僚」再考
第4章 内務省と戦時体制
終章 内務省解体と人治型集権制の変容
補論 昭和期内務省関係資料について
著者等紹介
黒澤良[クロサワリョウ]
1965年、東京都生まれ。1989年、立教大学法学部法学科卒業。1995年、東京都立大学大学院社会科学研究科(政治学専攻)博士課程、単位取得退学。2007年、同大学院より博士号取得(政治学)。学術振興会特別研究員、東京都立大学法学部助手などを経て、学習院大学法学部ほか兼任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
4
冒頭に内務省研究のレビューが載っているので参考になる。内務省を3つの媒介を通じて勢力を誇った機関と見做している。個人的には、内務省が機能失調を起こし、新たな事態に対応できずに、厚生省の分化・独立を機に、戦後を待たずに解体の危機にあったというのは興味深かった。時間がないので読み飛ばしたが、いずれ再読したい。2021/04/14
takao
1
☆警察と選挙を管轄し、知事を配下においた。2017/07/02
_
1
「総力戦体制を支えた中央集権体制の象徴」であり、ファシズム的体制を浸透させる手先となった、と戦後日本の社会科学は内務省を非難してきました。しかし、好戦派と関係を持つ革新官僚は常に主流から排除され続けたこと。そして、通説的理解とは逆に、政党政治が衰退し、ファシズム的体制に近づくほど、内務省はその力を失っていったこと。そして、「中央集権体制の尖兵」であったはずの内務省が解体された結果、その空白に他省庁が入り込み中央集権体制が強化されたことなど、内務省の実像に迫る上で興味深い分析がぎっしりの一冊でおすすめです。2017/03/07
ワッキー提督
1
治安機関としての視点を期待したが、地方行政機構を統括する巨大組織としての内務省の分析の面が多かった。あまり詳しい分野ではなかったため、あまり理解できなかった感がある。勉強していつか再読したい。筑波大学図書館にて。2014/04/12
Takeshi Kubo
0
戦前の日本で全国の警察・土木・地方行政等を押さえ、「官庁の中の官庁」とも称された内務省ですが、その全容は未だ十分に解明されていないそうです。本書で描かれた内務省の肖像は、政党政治と密接な関係を有し、その隆盛・衰退と運命を共にしたというものです。内務省に対しては、特に戦中期にあっては特高等警察権を振りかざし、絶対的な権力を有していたというイメージを持っていましたが、本書で描かれた内務肖像に触れて、そのイメージに少なからぬ変化が生じました。2015/07/15