内容説明
ある小説家の“生”と“作品”をめぐる物語―文学の王道をゆく、現代韓国随一の小説家の代表作。現代版『地下生活者の手記』(ドストエフスキー)。
著者等紹介
李承雨[イスンウ]
1959年韓国全羅南道生まれ。ソウル神学大学神学科卒業。朝鮮大学文芸創作学科教授。1981年、中篇小説『エリュシクトンの肖像』で作家デビュー。人間と宗教への根本的な問いや、また「不在の父」を主題とする作品などで大きな注目を浴びる。大山文学賞、東西文学賞、現代文学賞を受賞
金順姫[キムスニ]
大阪市生まれ。翻訳者。関西学院大学文学部卒業、韓国外国語大学大学院にて修士、博士課程修了。東洋大学にて、『源氏物語研究』で博士学位取得。韓国外国語大学通訳翻訳大学院講師、ソウル大学語学研究所講師を経て、梨花女子大学通訳翻訳大学院兼任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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泉を乱す
9
初の韓国文学でした。本当に「文学」でした。 数年前、私が恋人に自分でも意味もわからずめちゃくちゃ怒ってた時期があったんだけどその原因が言葉として自分に取り込めたのはとてもよかった。ということを恋人に言ったら、静かに頷いてくれてそれもよかった。 もうすぐ夫と言うようになります、はい。2020/05/31
Mark.jr
4
作者の分身とも言える小説家パク・プギルの半生を追った、自伝的な色の濃い作品です。そこに語られているのは、父と母の不在による暗い幼年期と社会への疎外感。読んでいる間、John Lennonのソロアルバム"ジョンの魂"をずっと思い浮かべていました。2019/12/20
有無(ari-nashi)
2
作家である私が、ある作家の人生を本人の作品を通して探る話。作家の作品から真実が隠れていそうな断片を、補足しながら再構成するという、変わった構成。不幸な過去から逃れようとするが、結局その影響は断ち切ることはできず、作家となって少しずつ屈折し歪曲させた形で過去を受け入れていくまでの過程。少し「第三の嘘」を思い出した。作中でいくつか小説のタイトルが出たなかに遠藤周作の「沈黙」が入っていたのに驚いた。2013/07/19
belier
2
雰囲気は70年代の暗い日本映画を彷彿とさせられた。しかし叙情に流されていない。純文学読者にとってはやや説明過剰だが、緻密で分析的な描写はわかりやすく写実的。主人公に寄り添いながらも冷静に突き放すことのできる文章は、作者の強さと知性を感じさせる。存在するとはどういうことか。人は、光を求めて悪魔に喰らわれてしまうこともあれば、暗闇にひたることで救われることもある。暗さを忌避してはいけない。暗闇の粒子と一体化する。ありえないがそんな神秘体験をしてみたくなった。2013/05/18
五十嵐筝曲
1
なにかが足りない。にじみ、とでも言おうか。2013/10/05