出版社内容情報
「行政の萎縮」という逆説はなぜ生じるのか?
保護者、医療関係者、行政関係者、メディア関係者、必読!
占領期に由来する強力な予防接種行政はなぜ「国民任せ」というほど弱体化したのか? 安易な行政理解に基づく「小さな政府」論、「行政改革」論は「行政の責任分担の縮小」という逆説をもたらしかねない。現代の官僚制を捉える最重要の視角。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ra
2
作為過誤=副作用と不作為過誤=感染症まん延が相反する「過誤回避のディレンマ」が先鋭化する予防接種行政において、「国による強制」から「国民任せ」まで公的責任領域が撤退した構造的問題を問う。公的責任領域は、作為過誤が潜在的であった時期には特異体質に帰責して「不可視化」したが、顕在化したものの不可避と認識された時期には無過失責任による救済制度により「希釈化」し、司法により回避可能と判断された時期からは保護者同意の必須化による「分散化」が図られ、いずれも「社会環境リスク」から「制度組織リスク」への転換に抵抗した。2023/04/09
すのす
2
コロナワクチン予防接種が進むこの状況下で、積んでた本書を読了。最後の方は半分寝ながら読んでいたので、再整理が必要だが、作為過誤と不作為過誤の同時回避が不可能という予防接種行政において、戦後から考え方がどう変わったか、責任の配分をどうしたか、などが整理されている。当時の新聞記事や審議会の議論も参照されており、末尾で御厨・牧原両先生に学んだ筆者だともわかり、まさに一つの歴史。公衆衛生分野が、単なる科学ゴリ押しでうまくいかないのが、よく分かるし、難しいと改めて思う。2021/02/19
Kenji Suzuya
2
本書では、予防接種行政を事例として、「やるべきなのにやらなかった」(不作為過誤)と「やるべきなのにやらなかった」(作為過誤)との間の、過誤回避のジレンマを描く。予防接種行政では、不作為過誤の回避から、次第に作為過誤の回避へと方向性が転換していく。この過程で行政・医師・当事者との間で、責任の分担がいかに変化していくかが、社会情勢の変化とともに描かれる。2017/04/23
文明
1
明快な枠組みで戦後の予防接種行政の構造を剔抉する名著2024/02/20
Ryueno
1
本書が分析対象としている予防接種行政においては、行政は「過誤回避のディレンマ」にとらわれているとする。過誤回避のディレンマとは、予防接種を幅広く行って副作用が生じてしまうというような作為過誤と、副作用による被害を恐れて予防接種の範囲を狭めて疫病が蔓延するというような不作為過誤の両方を同時に回避することは不可能であることを表す概念である。本書では、戦後日本の予防接種行政において、両者のバランスをどう保ってきたかを論じている。2014/01/04