出版社内容情報
開国の世界史的必然性を看破した先覚者
鎖国に安住する1830年代日本において『夢物語』を著し,開国の世界史的必然性を看破した先覚者。文書,聞き書き,現地調査を駆使してこの伝説的存在に迫り,実証と伝承の境界線上に,新しい高野長英像を描いた第一級の評伝。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきこ
2
いや~本書には時間がかかった。高野長英という人物の生きざまには脱獄と逃亡が中心となりがちだが、その人となりについては謎、作品によってまちまちだ。本書は小説ではないので分析に近い内容から、彼の長短両方の人格が見えてくるような気がした。また時代背景として鳥居耀蔵のこと、幕府政治の崩れる一歩手前の世の中の気風。蘭学者仲間のなかの身分に対する意識、シーボルト事件など様々な角度からの考察も興味深い。高野長英についてかなり掘り下げた内容なのではなかと感じた。作者が鶴見俊輔というのも魅力。2014/10/31
壱萬弐仟縁
0
彼の卒論は「鯨および捕鯨について」(p.129~)。このテーマは、今日のWWFとかIWCや、動物愛護協会のような組織からすれば、捕鯨の問題はある。だが、ここで注目したいのは、鯨がペリー来航のきっかけにもなったようだから、開国の要因をひとくくりにできない、ユニークな背景をも説明してくれる好著。伝記は他人の自分史を書くようなものだから、いろいろな資料を渉猟するその手法にも学びたい。2012/05/24