内容説明
災害、戦争、暴力、貧困…今も世界中の子どもたちが直面している、つらい出来事。「その子」はあなたであり、あなたの子どもかもしれません。壮絶な現実の中に、希望を見出すメッセージがこめられた1冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
85
いつもと同じ穏やかな一日のはずだった。爆弾が落ちて、爆音はさらに近づいてきた。男の子は家に走った。家は壊れていて誰もいなかった。また走った。気がつくと知らない人々の中に独り。かあさんは?……。戦火の中を生きる事になった子どもの物語。白黒のスケッチ風の絵が悲しい運命をリアルに伝えている。作者は、母親の日記を読み、長い時間をかけてこの物語を描いたという。日記の内容は凄惨の一言。作者はこの物語で、過酷な状況下でも希望を持つ大切さを描いているようだ。あとがきで東日本大震災の被災者の方々にメッセージを残している。2015/05/20
ルピナスさん
62
絵本、あとがきの作者と訳者の言葉、絵本再読の順で読んで欲しい。訳者落合恵子さんが思い出したレバノンの少年の言葉ー「大人になったら・・子どもになりたい」。恐怖と不安の戦禍を生き抜いた少年の想いです。本書は、突然の攻撃で両親と離れ離れになり泣きながら周りの助けを得て生き抜いた少女が母親と再会するまでのお話。でもあとがきで、心に傷を負いすぎた人間があらゆる感情を喪失し子どもを愛せなくなっていたり、終わらぬ悪夢に悩まされたりと、ハッピーエンドではいかない可能性もあると知るのです。軽いタッチ、なのになんて重い本・・2023/07/12
パフちゃん@かのん変更
58
平和な日常にいたのに、遊びに行っている間に戦争に巻き込まれてしまった子ども。家に帰ったら家は壊れていて誰もいない。たった一人残された子どもの手を引いてくれたのが子どもを連れた女の人だったり、やはり子どもを連れたおばあさんだったり。自分と幼子が逃げるだけでも大変なのに見ず知らずのこの子の手を引いてくれた人たちは神様のようだ。平和な日本でもかつては戦争でこんなことが起きたし、地震などの災害でもこんなことが起きてしまう。今ある平和に気付き、こんな不幸が起きないように。2014/04/12
とよぽん
53
今まさに、ウクライナで起きていることだと思った。突然爆撃され、家も家族も失い、逃げて逃げて・・・。この子のように「かあさんは どこ?」と何度も思い、口にする。安全で安心できる場所にたどり着いても、ともに暮らしていた家族と離れてひとりぼっち。訳者の落合恵子さんは、子どもから子ども時代を奪ってはいけないと「あとがき」で。作者はベルギーの絵本作家。自身の母親が第二次世界大戦で体験した辛い出来事を、絵本にまとめたもの。2022/06/27
ネギっ子gen
50
【そこは戦争から遠いはずだった】それなのに……。突然の砲撃。すぐ近くに、爆弾が落ちてきた。恐ろしい音がどんどん大きくなって近づいてくる。家はめちゃくちゃに壊され、誰もいない。男の子が、呼んでも泣いても誰も来ない。走って逃げ、いつか知らない人たちの中で一人ぽっち。そこらじゅうに傷つき倒れている人たち。守ってくれる人はなく、怯えだけが、心に……。やがて、ずっと忘れていた安心と安全があるところに辿り着いた。だが、「かぞくは どこ? かあさんはどこ?」母さんを想って、妹を想って、友達を想って、泣いていると――。⇒2022/05/23