内容説明
本書で描かれている「物語」は作り話ではない。まったくのノンフィクションである。世に数ある、お別れの中の「たった一つの物語」に過ぎないかもしれないが、そこに、現代の在宅医療が抱える課題がすべて包含されていることに気がついた。末期がんの在宅医療のすべてが、この本にある。
目次
井上トモミによる、父親の退院から自宅療養、死までの記録
第1章 長尾和宏とある娘の対話(最期は家で看取る、と決めた死がバカでした;病院とは、患者さんが24時間管理される場所;がん難民が、有名病院に入院する方法!? ほか)
第2章 ボタンの掛け違い―在宅医、病院の主治医の考え方
第3章 それも「平穏死」、と長尾が言う理由
あとがき 在宅医療の理想と現実
著者等紹介
長尾和宏[ナガオカズヒロ]
医学博士。医療法人社団裕和会理事長。長尾クリニック院長。一般社団法人日本尊厳死協会副理事長・関西支部長。日本慢性期医療協会理事。日本ホスピス在宅ケア研究会理事。全国在宅療養支援診療所連絡会理事。一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会理事。一般社団法人抗認知症薬の適量処方を実現する会代表理事。関西国際大学客員教授。2012年、『「平穏死」10の条件』がベストセラーに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Twakiz
27
在宅医療を実践されている第一人者による「病院と家族と在宅医のやり取りがうまくいかなかった1例」のドキュメンタリー.在宅医療の美談ばかりが語られやすいがそうではないことを示している.肺がん末期の実父を自宅で看取るため病院から連れて帰った方が「苦しがっている」と連絡しても在宅医は来なかった・・と.病院医療にも在宅医療にも利点と限界がある,きちんと理解して連携することが今後は必要だろう.在宅と病院とどっちにも関わっている医療者が一番バランスが取れると思う.たぶん.2020/05/03
ichi
11
【図書館本】全ての在宅診療医が痛みなく穏やかな最期を迎えられるよう支援してくれるわけではなく、良い先生、いまいちな先生がいる。という現実。「痛い在宅医」とはそういう意味。2018/06/17
ゆまたろ
8
在宅で看とるということはそんな生易しいことじゃない。だけど、病院で最期の最後まで点滴したり、血をとったりするのには違和感がある。どこまで治療するか、どこから静かに死を待つか、答えはそれぞれで1つじゃないんだろう。2018/12/11
ochatomo
6
【再々読】 『臨終の(1日から半日)前に“死の壁”(生体モードが大きく切り替わる転換点)を通り抜ける』 COPDからの肺がん、大病院の縦割りでは見方が偏りがち2022/08/10
yamakujira
5
末期がんの父親を在宅で看取ることを選択した女性が、緩和ケアを期待した在宅医の指示にとまどい、苦しみながら他界した父親の姿に自分を責めるとともに、在宅医の対応の是非を問う。実際のできごとをもとにしたドキュメンタリーだそうで、こんな医者でもひどいと言い切れないのが現在の在宅医療の現状だと知ると、在宅での看取りが怖くなるね。多死社会を前にして厚労省が診療報酬を餌に在宅医療の旗を振るから、患者のことよりも目ざとく金儲けを考える医療法人や医者もいるだろうけれど、素人には見分けがつかないな。 (★★★☆☆)2022/09/12