内容説明
フィッツジェラルド、サリンジャー、デリーロはもちろん本邦初紹介の作家から、日本では知られざる村上春樹の素顔にいたるまで最新型の“アメリカ文学”の魅力をこの一冊にパッケージ!21世紀もっとも話題のアメリカ文学者・都甲幸治の第一評論集、ついに刊行。
目次
第1部 メイキング・オブ・アメリカ文学―作家論(大人げなさの系譜―フィッツジェラルド、サリンジャー、ブコウスキー;若返るベンジャミン、甦るフィッツジェラルド;『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を再読する ほか)
第2部 アルファベットの魅惑―Book Reviews(空の上、大地の下―異界の変容を読む;殺人の海―犯罪を読む;“音”の記述法―小沼純一『魅せられた身体』 ほか)
第3部 語りえぬものの世界―ドン・デリーロ論(不意打ちする他者―『ホワイト・ノイズ』;テロリズム・カルト・文学―『マオ2』;語りえぬものの世界―『アンダーワールド』 ほか)
著者等紹介
都甲幸治[トコウコウジ]
1969年、福岡県に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科博士課程を経て、早稲田大学文学部准教授、翻訳家。専攻はアメリカ文学/文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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harass
66
英文学者翻訳家のエッセイや書評評論記事をまとめた本。なかなか明快で分かりやすい。はじめにで、表題の意味は留学直後に著者が思い知らされたことの、著者なりのその解決だ。これは我々にも痛い話だ。また、村上春樹には「見えない」テキストが存在するという。単行本に収録されないごく初期のと邦訳されていない彼のエッセイと、英訳されてない初期の長編二つ、それらの意図を探る評論。デリーロの凄さの解説。ブコウスキーが愛読し影響を受けた「塵に訊け!」など多数。面白く読めた記事がいくつもありさすがに第一作目の本特有の濃さがある。2018/04/23
M H
14
海外文学の水先案内人的な都甲さんの第1作。村上春樹の日本では見えない側面を扱うくだりが特に面白かった。デリーロのは何か難しくて…「マオⅡ」ってまだどこでも見かけてないんだよなー。あと、名前が出てくるヴィエト・タン・ウェン?ってシンパサイザーの作者なのか?評論を理解できたとは言えないんだけど、対象への傾き(愛ともいう)を隠さないのは昔から変わらないんだと好感。2019/07/19
ナハチガル
11
いつもながら、いろんな作家の紹介もよかったけど、米文学を研究する日本人という自意識と、米文学を吸収することであらたな日本文学を生み出そうとする村上春樹についての話が抜群に面白かった。また特に海外の媒体に掲載されていたという村上さんのインタビューの内容は、日本で流通しているエッセイとは異なり、非常に興味深い。「(戦時中の)そうした記憶は当時まだ生々しかったんです。殺したり殺されたりといったね。とにかく僕は中華料理がまったく食べられません。はっきりどうしてかはわからないですけど、ダメなんです。」A+++。2017/08/19
ミツ
7
村上春樹と柴田元幸の影響を強く受け、翻訳者でありアメリカ文学研究者でもある著者の評論、エッセイ、書評を集めた著作。文章が平易で気取ったところがなく、論自体も分かりやすくスラスラと読めた。一章でフィッツジェラルド、サリンジャー、ブコウスキーからアメリカ文学の側面で見た村上春樹を論じ、二章でオースター以降の現代アメリカ文学作品を紹介する。そして三章全てを割いてドン・デリーロの作品考察がなされる。ドン・デリーロ、あるいは現代アメリカ文学の入門として良質な作品。良作。2011/01/09
Ecriture
7
翻訳や日本人がアメリカ文学を読むことを偽アメリカ文学とし、一方でアメリカ文学という観念が今や存在しないことを説く。謙遜するでも卑下するでもなく偽アメリカ文学者であろうとする著者の歩みを示した本。フィッツジェラルドやブコウスキー、カーヴァーなど有名どころの紹介に留まらず、日本ではあまり注目されていない短編など目新しいものがある。海外での村上春樹インタビューもお得。終盤のドン・デリーロ論はあらすじのレベルから読み違いがあり残念だが、一定の水準にはある。ブックガイドとして使うならオススメできる。2009/08/07