内容説明
国民的ベストセラー『坂の上の雲』で、日露戦争を知った人は少なくない。この本で司馬遼太郎は、乃木司令部が旅順戦ではまったく無能で、児玉源太郎と参謀本部で釆配して攻略できたという。「乃木の無策で多数の人間が死んだ」と批判するが、果たしてそう言い切れるのか?旅順を落とすには、より多くの敵兵を短期間に殺傷するしかない。消耗戦では、どこを攻めるかではなく、どの地点で効率よく敵兵を殺傷できるかが問題なのだ。現在のヒューマニズムの観点から批判しては、軍人の評価はおろか、その時代を理解できない。司馬の作品は、当時の軍事常識の観点がすっぽり抜け落ちている…。203高地戦の真の狙いと、その後の戦いに影響を与えた乃木司令部の革新的戦術を明らかにする。
目次
対談 架空戦史から戦訓を引き出す危うさ(兵頭二十八・別宮暖朗)
第1章 永久要塞など存在しない
第2章 歩兵の突撃だけが要塞を落とせる
第3章 要塞は攻略されねばならない
第4章 失敗の原因は乃木司令部だけにあるのではない
第5章 ロシア軍は消耗戦に敗れた
第6章 旅順艦隊は自沈した
第7章 軍司令官の評価はどうあるべきか
著者等紹介
別宮暖朗[ベツミヤダンロウ]
1948年生まれ。東京大学経済学部卒業。西洋経済史専攻。その後信託銀行に入社、マクロ経済などの調査・企画を担当。退社後ロンドンにある証券企画調査会社のパートナー。歴史評論家。ホームページ『第一次大戦』を主宰
兵頭二十八[ヒョウドウニソハチ]
1960年生まれ。東京工業大学・理工学研究科・社会工学専攻・博士前期課程修了。雑誌編集部などを経て、現在は「軍学者」
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