内容説明
貴族院は敗戦後消滅し参議院に継承された。しかしノブレス・オブリージュを本分とした貴族院の存在意義は後者に継承されることはなかった。本書はかつて帝国議会の一翼を担った貴族院の足跡をたどり、その歴史的意味をさぐる。
目次
第1章 議会制度導入と貴族院の組織
第2章 初期議会と貴族院
第3章 官僚派の牙城として
第4章 政党政治と貴族院
第5章 戦時下の貴族院
第6章 貴族院の終焉
著者等紹介
内藤一成[ナイトウカズナリ]
1967年愛知県生まれ。1996年日本大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。2004年青山学院大学にて博士(歴史学)を取得。現在、宮内庁書陵部主任研究官(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
4
貴族院の概説書として面白く良書。議員の選出方法や議事の内実など知らないことばかりで勉強になる。近代の日本政治史において傍系ともいえる貴族院であるが、その内実は非政党主義を標榜しつつも却ってドロドロとした人間模様と政局が繰り返されていたように思う。あくまで第二院として衆院を尊重しながらも、多彩な貴族院議員は決して時局や世論に阿ること無く気炎を吐いた者がいたことは事実である。戦時下になると「保守的」で「現状維持的」な貴族院が議会政治の細々とした灯火になるというのは皮肉に満ちている。2022/12/03
中将(予備役)
1
貴族院がもう無いのは残念であるし、公職追放や自分達を無くす憲法の審議の記述は悲しかった。有爵者は歴史的経緯から国に貢献しようと努力し、勅撰、学士院推薦、多額納税者の各議員はそれぞれの見地から審議した。谷干城子や大河内輝耕子らは際立っていた。会派の争いや、昭和期の不穏当な議員、根強かった華族批判など、理想通りでなかったにしても、惜しい。2018/08/03
denken
0
参議院を考える参考に読んだ。自分の意見を通すには徒党を組まなきゃならないのは貴族院でも同じこと。一騎当千のつわものが,俺が俺がの高度な議論をやっても,あまり生産的でない。2010/12/20
Teo
0
非常に興味深く読んだ。著者の立ち位置からやや貴族院を良い方に記述しているが、それでも大日本帝国憲法下の貴族院がどの様な働きをしたのかを見れば、日本国憲法下の参議院が政党中心の議会となり、昨年の民主党の単なる政権妨害の様な様子を見れば貴族院以下の存在価値であると思えよう。2010/01/15