出版社内容情報
英国人初のノーベル賞を受賞するも、久しく帝国主義者のレッテルを貼られたキプリング。再評価が進むなか、14名の執筆者が様々な《読み》を展開し、多面的な作品群に迫る。
内容説明
植民地インドに生まれ、帰国後、大流行作家となるも、久しく“帝国主義者”のレッテルを貼られたキプリング。日本キプリング協会の14名の執筆者がさまざまな“読み”を展開し、多面的な作品群に迫る。本邦初のキプリング文献書誌を収録。
目次
キプリングの帝国―現実と夢の境界
挑発するキプリング
インド表象
キプリングの東方幻想
アングリシストとオリエンタリストの系譜―W.D.アーノルドからサルマン・ラシュディまで
首をめぐる輪舞―「王になろうとした男」におけるホモエロティックな欲望
サロメとキプリング
忠誠と背信のダイアグラム―恐怖と欲望にみる植民地支配の相関力学
帝国の幽霊たち―ホモフォビアとミソジニーの植民地表象
帝国少年のマトリックス―「ブラッシュウッド・ボーイ」再論
中断された復讐―「損なわれた青春」におけるレディ・カストレイ
ミツバチは知っている―キプリングの「帝国」の一面
キプリングとハガード
ハーンのキプリング崇拝―新たな文体を模索して
著者等紹介
橋本槇矩[ハシモトマキノリ]
学習院大学文学部教授。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了
桑野佳明[クワノヨシアキ]
流通経済大学経済学部教授。学習院大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
1
キプリングの評価は、時代と共に変化する。60年代は、パックス・ブリタリカの申し子として、コロニアル主義、ホモフォビア、ミソジニーなどと称され、その評価を下げられていた。しかし、80年代以降、ポストモダン主義やニュークリティズム、マルクス主義といった概念が脱構築され、彼の評価が見直されていく。それは何故だろう?これは私観ではあるが、今まで大勢を占めてきた西洋哲学歴史観という側面からではなく、東洋哲学歴史観から見られるようになり、ちょうどキプリングは、西洋と東洋との狭間に立つ作家だからだと感じるからだ。2014/06/19
うにこ。
1
前半はキプリングの作品からの、キプリングの思想と当時のイギリス情勢や思想についての考察。 後半はキプリングの人生や交友関係から見たキプリングの思想の考察。 後半、ハガードとの交友関係やハーンのキプリング崇拝の論文は面白く読めました。2007/01/26
志村真幸
0
日本キプリング協会の10周年で企画された論集だ。なお、『ラドヤード・キプリング-作品と批評』(松柏社,2003年)に続く第二論集でもある。 14名の論者が参加しており、それぞれの視点からキプリングと帝国について語っている。作品分析もあれば、キプリングの人間性に迫るものもあり、ラフカディオ・ハーンとの関係を明らかにする論文も。 帝国研究がもりあがっていた時期に出た論集であり、みな意欲的に新しい切り口を見いだそうとしている。 イギリス文学におけるインドという存在の大きさを認識させられた。 2022/05/22