イノチの天音(アマネ)―響きあう家族のとき

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イノチの天音(アマネ)―響きあう家族のとき

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  • サイズ B6判/ページ数 158p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784880491721
  • NDC分類 916
  • Cコード C0077

出版社内容情報

 神話を読んだような--などというと平明さんは「気色が悪い」というでしょう。でも、お二人が日常の言葉で気取りなく事実を語ろうとしても、天音さんの重さが本に深さを刻んでしまうのだと思う。
 ヒロミさんが、天音さんを描き続けたのも、なにか大いなるものの意志を感じてしまいます。なにより天音さんは、ヒロミさんの絵の中で生きています。
 若くして亡くなられた人のことは、生き残った人が、あの手この手で覚えていてあげなくては--。天音さんの無言、大きな瞳、少女の香り、短い人生が語るものを聞こうとしなくては--と、シンとした気持ちになっています。(作家・山田太一)

はじめに 

天音15歳、春
大当たり 8
仕事を辞めて 11
「抱っこ」の泣き脅し 14
人間椅子 16
親友 19
ひとり遊び 21
夜型にして天音型 24
待合室 27
死の予測 29
あまね通信 32

イノチの天音
ガールフレンド 36
あなたは幸せよね 40
覚悟の夏 45
いのち響き合って 48
人生悲しゅうなりまっせ 53
心配ぶとり 57
僕の幸福論 62
沈黙の壁 65
ダイエット 70
自分が情けなくて 73
運命との共生 77
歯医者通い 80
携帯電話 85
手編みのセーター 88
渦中の人 93
先生、ついて来て 96
開き直って 101
別の世界 104
依存症(三代) 108
家事なんて 111
無垢純真症 116
そろそろ独立 119
困った癖 123
ごほうび 126
危うい境界線 131
奇妙なデイト 134
専属モデル 139
ここだけのお話 142
魂の泣き声 146
明るく穏やかな朝 149
使命感(イノチのお使い?) 153
「希望はありません、か」 155

あとがき

はじめに――――障害の子をもつ夫婦のやりとりを本にしました

「死児の齢(よわい)を数える」ということわざがあります。死んでしまったわが子が生きていたら今年いくつになるのかなあ、などと取り返しようもない過去のことについて愚痴をこぼす、という意味とか。私たち夫婦の一人っ子である娘の天音(あまね)が亡くなって1年がたとうとしています。娘は去年10月16日に、28日間の入院期間をへて、19歳4カ月で亡くなりました。「生きていれば」今年6月、20歳になるはずでした。
 出産時の医療ミスによる酸素欠乏から、脳に大きな損傷をこうむった天音は、いわゆる在宅の重症心身障害児ですが、まったくといっていいほど病院にいかず、施設にもいれず、ずっと家で暮らしてきました。
 しばしば呼吸不全におちいり、とっさにほどこす母や父の人工呼吸で息を吹き返すのでした。睡眠時間も少なくて言葉もなく、食物も液状にして哺乳ビンでとり、首も座らず寝たきりなので、目覚めているときはずっと抱っこでした。横にすると怒り「抱っこして」と泣くのです。オシメをつけて、ウンチは浣腸でだします。
 こんなたいへんなこどもですが、私たち夫婦は、泣きわめくこの子の脇で、

内容説明

本書は、娘のイノチをたもつことは暗黙のうちに努めながら、逃げ場なき家のなかで、壮絶なやりとりと果てることなき葛藤をつづけた、著者たち二人のやりとりをエッセイという形で、季刊雑誌『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』(ジャパンマシニスト社)に一九九六年五月から五年ちかく連載した夫婦プラス天音の共棲の記録である。

目次

天音一五歳、春(大当たり;仕事を辞めて;「抱っこ」の泣き脅し;人間椅子 ほか)
イノチの天音(ガールフレンド;あなたは幸せよね;覚悟の夏;いのち響き合って ほか)