出版社内容情報
現代社会において、キリスト教とキリスト者はいったい何ができるのか。過去の歴史を振り返り、現在を総括して、その功罪を明らかにし、未来への指針を提案する。
●基調講演
支配する神 仕える神……鈴木 伶子
「正義の戦争」の理論と現代カトリック教会の動向……ハンス ユーゲン・マルクス
戦争における罪の意識をいかに継承するか……野田 正彰
●国際シンポジウム
キリスト教と女性の平和への貢献……バーバラ・ブラウン・ジックモンド
国家主義と宗教フィリピン共和国におけるキリスト教……レスリー・E・バウゾン
主題を北東アジアの文脈で考える……李 仁 夏
キリスト教の功罪と聖書解釈……荒井 献
●まとめ
現代社会におけるキリスト教の役割……蓮見 博昭
[資料1]日本基督教団の「決戦下伝道実施要綱」
[資料2]「第二次大戦下における日本基督教団の責任についての告白」
[資料3]「使徒信条」
本書は2003年11月7~8日、恵泉女学園大学大学院主催により、「世界平和とキリスト教の功罪――過去と現在」を主題として開かれた国際シンポジウムの全記録である。
このシンポジウムを開催するにあたり、筆者は主宰責任者として、以下のようなシンポジウムの趣旨説明を案内パンフレット上に公にした。
恵泉女学園大学大学院人文学研究科は、今日の国際社会が直面している紛争、貧困、差別などの諸問題の実態とその解決策を探ることから真の世界平和を考え貢献できる人材を育成することを目的として2001年に設立され、同年、「アジアにおけるジェンダー研究の最前線――戦争、暴力、正義:変革の主体としての女性」をテーマとした大学院開設記念国際シンポジウムを開催し、それに引き続き昨年は「国際刑事裁判所の可能性と課題――紛争下の暴力を裁く国際機関の役割」と題した国際シンポジウムを行ないました。大学院設立3年目を迎えた今年は、その修士課程完成を記念して、前年までの2回の国際シンポジウムの成果を受けつつ、とくにイラクへの武力攻撃を実行したアメリカをめぐる昨今の状況と国際論調を鑑みて、世界平和・戦争に対する宗教、とりわけアメリカと日本をはじめとする主スト教界が、今日の世界情勢にどのように向かい合い、これからの世界平和の構築にどのように取り組もうとしているのかについて、そのみずからの過去の功罪を問い直しつつ創造的、啓発的な討論を交わすことで、世界平和実現にむけてのキリスト教の可能性と課題を探ることに努めることといたしました。
以上のようなシンポジウムの趣旨を受けて、第1日目にはハンス ユーゲン・マルクス(南山大学学長)、鈴木伶子(日本キリスト教協議会議長)、野田正彰(京都女子大学現代社会学部教授〔当時〕)の各氏により、それぞれカトリック、プロテスタント、ノン・クリスチャンの立場から「基調講演」が行なわれた。
第2日目には、これらの講演を批判的に評価したうえで、バーバラ・ブラウン・ジックモンド(同志社大学大学院アメリカ研究科教授〔当時〕)、レスリー・E・バウゾン(フィリピン大学教授)、李仁夏(在日韓国教会名誉牧師)、そして筆者により、それぞれの立場から発題があり、それに続いて、基調講演者・発題者相互間で、またフロアーからの質問に応えて、熱心な討論が続いた。
本書末尾には、この国際シンポジウムの「まとめ」が、シンポジウム組織委員の一人、蓮見博昭(