内容説明
戦中、兵隊ヤクザとして名を馳せた「愚連隊の神様」万年東一、非転向政治犯を最後まで貫いた「在日の星」金大海―権力とは無縁にして最強の二人が、戦後はアウトロー側と第三国人側の対極のリーダーとして実力対決したのは運命の皮肉か？昭和の裏面史を飾り、時代の闇から浮かび上がった伝説の両雄に熱いエールを送る傑作ノンフィクション。
目次
愚連隊の神様―万年東一（焼け跡の銃撃；愚連隊の元祖；用心棒と突撃隊 ほか）
在日の星―金天海（不逞鮮人の誕生；朝鮮共産党ヤチェイカ；下層戦闘員たちの人民戦線 ほか）
不逞者の系譜―万年東一と金天海
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリータ
9
◆'98年単行本、'99年文庫。万年東一（1908-1985）、金天海（1899-?）のW評伝。「万年が愚連隊としてのしあがってくるとき、金天海は朝鮮人労働運動のオルグとして活躍していく。万年が宿敵・爆弾マッチとの抗争でパクられれば、金天海は反日独立闘争でパクられる。万年が安部磯雄襲撃事件でファシズム体制確立を促進したとき、金天海は反ファシズム人民戦線の活動に従事。戦中は、兵隊ヤクザと非転向政治犯。そして、戦後はそれぞれアウトロー連合側、第三国人側のリーダーとして実力対決…（397-398頁）」2021/12/20
isao_key
8
戦中、戦後にヤクザとは一線を画す愚連隊の神様としてその名を馳せた万年東一と同じ時代に在日朝鮮人支援組織の長として在日の地位向上のために戦った金天海についてのノンフィクション。生き方の異なる二人だが、金や名誉に無頓着であり、自分の信念や信条のために生き方を貫いたという点では、一致している。二人ともに親分肌であり、弱者に対して思いやりと優しさを持っている。万年は、刑務所から出所したばかりの女に万年の妻が着物を貸し与えて逃げられてしまった際に、着ていかれた者より、着ていった者のほうがもっとつらいと話したという。2014/03/07
姉勤
7
万年東一と金天海。不逞者との表題だが、二人は逞しからざるという表現には程遠い、タフでバイタルだ。そして、どんな苦境でも私より他者を優先する、無私というパーソナリティー。この矛盾に満ちた状態が侠であり、そして魅力。昭和の混乱期、二人は違うかたちで筋を通した。それが、譬え違法や反社会であっても。法に従い社会に屈すれば、自分や仲間が無抵抗のまま、死ぬしかなかったから。何が悪とか正義とかでなく、何かに一色になる事が悪であり。誰かの生存の否定だ。正直、サヨク的な欺瞞は許容したくないが、その真逆一色に染まるのも断る。2013/10/08
出世八五郎
3
意味不明なまま読了。再度挑戦したい。
りいぶる
2
面白い。ほとんど一気に読んでしまった。金天海と万年東一。戦時中から戦後にかけて重なる時代を生きたのに、住んでいた世界は別。それを、市民社会のルールをはなから相手にしない、自分のやり方を貫いた人物として描き切っている。しかも時代風潮との関わりを押さえながらの書きぶり。現代日本の閉塞に風穴が開くとしたらこのような破天荒な所業をできる人物なのだろう。2021/11/14
