感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kazuya
22
読友さんお勧めの一冊。入手に苦労するも一気に読了。とても素敵な作品でした。憐憫の情に愛をかき立てられ、読みながら何度「は〜...」と呟いていたことか!! 『この地上には二つの時間があるような気がした。(中略) ひとつは僕らの側の時間。そしてもうひとつが背中合わせの時間だ。それは過去と呼ばれるような緩やかな時間ではない。二つの時間は決して折れ合わない。振り返ってみても語りかけてみても、僕らは僕らの時間の側にいる限り、懐かしい者や愛する者に交わることは出来ない...。』は〜...、やるせない...。【S】2014/12/08
simasima
16
困った、冷静に感想書けないよこれ。まずは内容をざっくり。少年の目から見る村の暮らしと村外れでひっそり暮らす朝鮮人の李さんを描いた第一章。その李さんとひとりの女の透明な交流を中学生になった少年が見つめる第二章。第三章は大人になり都会で暮らす少年が受け取ったある訃報…。淡々とした素朴な文章に鋭く研がれた適確な表現を閃かせ、静かな透明感を全体に満たしながら、行間からは圧倒的な抒情と鮮烈な孤独、そして気高い魂が迸る。静かな夜の底で真摯に向き合うことで確かな感動を得られる一冊。褒めすぎか?いや、沁みたもん!S2014/12/01
yoshi41101
5
本屋本談(松岡正剛と田中優子の対談)で知り、読んで魅きこまれた。ひとの魂に想いを馳せて、閉じた目の奥に涙が潤んでいく、そんな読後感。すべてひとりで背負い何も言わず受け入れて生きていく窪に住み着いた謎の男、三代にわたってそれぞれのかたちで自分を抑えながら生きていくしかなかった女達、察することはできても何もできなかったぼく達。村うちの排他的でときに残酷な空気、そして都会の孤独。もう手の届かなくなってしまった過去を、ぼんやりと思い出させる。→ぜひ読んで欲しい!そして第二部「涙ぐむ目で踊る」も読もう!2010/02/04
Quijimna
4
誰にでもためらいなくオススメできる書と、そうでない書があるけれど、この1冊は後者の筆頭。 なにかのきっかけで深い共感を持てた人にこそ読んでほしいと思う。 無名な人にスポットライトを当てて、その愚鈍なまでの歩みの中から普遍性と崇高な人間存在を語らせる著者の力量は、本書をスタートとする「二部作」でいかんなく発揮される。 閉鎖的で排他的な農村集落の、痩せた暗い土地にいつしか住み着いた異邦人。 彼を見つめ、彼に近づき、そして拒絶する村人の行動。 (つづく) 2007/03/18