内容説明
神話、ギリシア悲劇に範をとりながら、独特の「近代性」をもつ唯一のローマ悲劇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fseigojp
17
オレスティア三部作の起源となるテュエステスは、実に残虐な話でした2017/04/30
roughfractus02
9
著者の悲劇は感情に憑かれる人物たちを後世「グロテスク」と呼ばれるほど強調する。理想的人物としてソポクレスが描いたオイディプスは、ラテン語読みのオエディプスになると凡庸で自信のないまま罪の意識に錯乱する者になり、妻と姦淫したテュエステスの子どもたちを殺してテュエステスの食卓にその肉を供するアトレウスの残忍さは、後の復讐劇に影響を及ぼすほど強烈だ。その中で、傲慢な中に自らの死を受け入れるヘルクレスやアガメムノンの死後、奴隷の身でも生き延びた境遇に感謝する王女カッサンドラは、限られた生へのストア派的態度を示す。2019/07/06
viola
9
私はいつからこんなに古代ギリシャやローマの文学が好きになったんでしょう。エリザベス朝演劇に多大なる影響を与えた、セネカ。ネロの教育者としても有名です。『オエディプス』、『アガメムノン』、『テュエステス』、『オエタ山上のヘルクレス』(←my best)、『オクタウィア』が収録。1巻よりも、2巻のほうが面白い。驚いたのは、『オクタウィア』。唯一の歴史劇で、ネロにセネカ自身も出てくる!これって有り得ないし、セネカはネロの死まで生きていないので確実に別人作。でもなんでここに収録されているんだろ。2012/10/23
ハルバル
4
壮大なレトリックとデモーニッシュな人物像、グロテスクな描写が特徴的なセネカ悲劇はヨーローパ古典劇に強い影響を与えたらしい。確かにシェイクスピアを思わせる部分が多くあった。劇的展開に乏しく、レトリックを楽しめるか否かで評価は分かれそう。私は神話知識や警句的表現が好きなのでとても面白かった。特に「テュエステス」、「アガメムノン」が好きかな。「オイディプス」はエウリピデスよりも救いがない。「オクタウィア」は出来はよくないが現存する唯一のローマ歴史劇という点で価値は高い2016/03/07
刳森伸一
3
偽作1篇を含む5篇の戯曲を収録。『オエタ山上のヘルクレス』はヘルクレスの最後を描いたもので、ここでのヘルクレスは英雄に相応しい偉大な人物として描かれており、非常に面白い。一方『オエディプス』はソポクレスの同名の悲劇に遠く及ばないと思う。他の作品は悪くはないけど、全体としてみれば、1巻の方が好みかな。2015/05/12