失語症者、言語聴覚士になる―ことばを失った人は何を求めているのか

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ A5判/ページ数 198p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784876721542
  • NDC分類 369.27
  • Cコード C0036

出版社内容情報

交通事故に遭い、生死の危機から脱出した青年は、意識を取り戻すに連れ、完全に言葉を失っている自分を発見して呆然とする。自分の名前さえ思い浮かばないのだ。
 その後、失った言葉を取り戻すため、思いつくあらゆる手段を使って必死の努力を重ねていく。幼児向けの「こくごえじてん」に始まり、映画「2001年宇宙の旅」のパンフレットを読解・・・・・・と。訓練中、言語能力の“劣った”自分に嫌気をさすことは幾度もあったが、精神の復元力を失うことはなかった。なぜなら、孤独で単調な訓練を重ねることによって一つずつ単語を再獲得することが、社会に歩を進めるための選びようのない試金石だからである。
 やがて、言語訓練教室で関わってくれた医療職との篤い出会いは、著者に言語聴覚士の夢を育んでいく。

1章 闘病記
悪夢/交通事故/ことばの闇/記憶も喪失/言語治療開始/試される屈辱/とりあえず退院/できる喜び/負けてはいられない
2章 ことばがほしい
復学したものの/白紙の答案/理解者を求めて/失語症とは孤独病?/劣った自分への怒り/見えない未来/試験場にて/ストレスを溜めて
3章 失語症に誘われて
親友との別れ/人生の主人公は/就職活動/運命の出会い/私が言語聴覚士に?/遠藤先生を訪ねて/水を得た魚のように
4章 言語聴覚士として
言語聴覚士一年生/大阪、そして鶴岡へ/山梨にて新展開/国家試験/STの仕事とは/運命の網膜剥離
5章 愛しき失語症者
愛のムチ/ことばを超えて/発話意欲は環境から/失語症の受容へのサポート/失語症者と仕事
6章 私の選んだ道
「生きていてよかった」と言うために/訪問STの役割/再度、言語訓練の目的は?/若い失語症者の活動/あえてSTに伝えたい


失語症者はひたむきである。
大学生の時に脳外傷を負った著者もまた、新生活を模索した20年の道のりを通じてそのことを伝えてくれる。(帯のコピー 遠藤尚志)

内容説明

失語症になってしまった方に短期間の治療を試みただけで、「これ以上回復する見込みはありません」と訓練をうち切るのは、大きな間違いを犯していることになる。大学生の時に脳外傷を負った著者の、新生活を模索した20年の道のり。

目次

1章 闘病記
2章 ことばがほしい
3章 失語症に誘われて
4章 言語聴覚士として
5章 愛しき失語症者
6章 私の選んだ道

著者等紹介

平沢哲哉[ヒラサワテツヤ]
1961年、山梨県牧丘町生まれ。1985年、青山学院大学文学部教育学科卒業。1987年、STとして病院に勤務。1988年、大阪教育大学教育学部言語治療研究生を経て、山形県、山梨県の病院に勤務。1999年言語聴覚士免許取得。2003年、病院を退職し、在宅言語聴覚士として失語症者の訪問ケアを展開。地域での失語症者への援助を積極的に行っている。「山梨県失語症友の会連合会」および「東山地区失語症友の会」事務局長
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

花男

21
読んで時折胸が痛んだ。失語症の症状はなった人以外に理解するのは難しいだろう。けれども話せるようになるまでサポートするこの仕事は本当に大変でやりがいもある。問題は退院したら終わりでなく、その後の日常生活までもサポートしていける体制が必要。2022/07/03

ポカホンタス

4
著者から直接いただいた本。自身が大学生の時に交通事故に遭い、失語症になった。なった人にしかわからない失語症の世界を、失語症からの回復途上である著者が文章で表現する。氏の文章には少し痛ましさがある。余分な美辞麗句が一切ない文章とはこういう文章なのか、と思う。力強いというのでもない、素朴というのもでない、ただ精一杯の文章なのだ。氏の訪問STを見学させていただいたときに覚えた静かな感動が蘇った。 2016/03/30

赤坂サラザン

3
大学在学中に事故で失語症を患うことになった苦悩の日々や、STという道を選んだ経緯が率直かつ克明に綴られています。語られる思いや視点は経験者しか分かり得ない未知の世界であり、だからこそさまざまな立場の人々への真摯で貴重なメッセージとなっています。そこには私たちの社会が抱えている問題点も透けて見えてきます。罹患者である身内とのコミュニケーションの手掛かりとなりそうなヒントも多数見つけることができました。2014/01/28

kana

2
自分の体験から失語症者の助けになりたいという気持ちがとてもよく伝わってきました。失語症になった時の辛さや思いが全く風化されず、それを患者さんの治療に活かすことができている…。平澤さんは強い人だと思ったし、彼に出会えたクライアントの方は本当に幸せだろうなぁ…って思います。2014/04/10

chocolate_tokyo

2
STになることになってしまい、読んでみたいと思っていた本。失語症の方々の気持ちが丁寧につづってあって、自分も気をつけようと思うことがたくさんあった。来週、講演を聴くのが楽しみ。2014/02/17

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/79157
  • ご注意事項

最近チェックした商品